運がよかったと、思って欲しい。

lady luck / shaggyshoo
幸運の女神?
運がよかったと、思って欲しい。
introduing 「歩いても 歩いても」「奈緒子」
自分の人生を振り返ったとき、素直に運がよかったと思えることがいくつかある。
1955年に西日本一帯で「森永ヒ素ミルク中毒事件」が発生したが、そのとき赤ん坊だった僕は、運よくその犠牲者にならなかった。
1968年に福岡県を中心として「カネミ油症事件」が発生したが、そのとき中学生だった僕は、幸いにもその被害者にならなかった。
今まで少なくとも3度は車にはねられそうになったが、すんでのところで事なきを得た。明らかに酒気帯び運転と思われる車が僕の鼻先で急停車したこともある。
今まで1度しか50メートル・プールを泳ぎ切ったことがないが、溺れそうになったこともない。
そんな僕だから想像してみる。一見自分ひとりで難を逃れたように思えるこれらの出来事が、ひょっとして誰かのお陰かもしれない、と。
そんな僕だから想像してみる。海でも川でもどこでもいい。もし自分が溺れそうになって命を助けられ、助けてくれた人が命を落とした場合、運がよかったと思えるだろうか。
ハイホー、マンハッタン坂本です。
横山医院から初老の恭平(原田芳雄)が杖をついて出てくる。散歩に出るのだ。今日は娘のちなみ(YOU)が夫と子供2人を連れて来ている。長男の命日だからだ。
坂を下り神社の階段を降りると海が見える。15年前に、溺れる少年を助けた純平が命を落とした海だ。
散歩から帰るとまっすぐ診察室へ入る。医者を引退してから書斎代わりに使っている。
次男の良多(阿部寛)が訪れる。結婚したばかりの妻のゆかり(夏川結衣)と彼女の連れ子も一緒だ。
妻のとし子(樹希樹林)が純平の好物だったトウモロコシの天ぷらを揚げる。
匂いにつられて、恭平が台所に顔を出す。家族と一緒に食べながら、30年前に隣りの畑からトウモロコシを盗んだ話で盛り上がる。
仏壇には白衣を着た長男の写真が飾ってある。病院を継いでくれるはずだった。
全員で記念写真を撮る。言い出した良多と一緒に、とし子は山頂の墓地へ出かける。子供の墓参りくらいつらいことはない、とぼやく。
坂を下る帰路、黄色い蝶が飛んでいる。冬に死ななかったモンシロチョウの化身だととし子が言う。
家に帰ると、小太りの今井良雄が来ている。長男に命を救われた25歳の青年だ。
明るい声で近況を報告しながら、水羊羹を2個も平らげる。
純平さんの分までしっかり生きますから、と言って仏壇を拝む。しびれた足で立ち上がれない。
うな丼の夕食中、突然とし子がドーナツ盤を持ってくる。
いしだあゆみの歌声が流れる――「歩いても 歩いても 小舟のように」
30年前に恭平が浮気したときに買ったらしい。恭平の入浴中、とし子がさり気なくもらす。
「十年やそこらで忘れてもらっちゃ困るのよ。年に一度ぐらい、つらい想いしてもらっても、バチは当たんないでしょ?」
良雄くんを呼ぶのは止めようと提案する良多に対し、とし子は手編みをしながら静かにそう言い張る。
家の中に黄色い蝶が迷い込んでくる。純平と呼びながらとし子が追いかける。
バスを待っていると、とし子が別れの握手を求めてくる。さすがに良多は嫌がる。
それから3年が経ち、恭平が逝く。あとを追うようにとし子も他界する。
(注釈1)
波切島の海岸沿いを一人の少年が走っている。
その様子を漁船の上から眺める少女がいる。喘息の静養に来ていた小学6年生の「奈緒子」である。
突風が白い帽子を飛ばし、あっと言って少女が海に落ちる。乗組員が勢い飛び込む。少年の父親である。溺れる奈緒子を助け、流された帽子を拾い行く。船へ戻る途中、再び突風が襲う。父親が海中深く沈む。
こいつのせいだ!と少年が叫ぶ。仏壇の前で少女が恐れおののく。
全国高校陸上選抜記録会で、篠宮奈緒子(上野樹里)はその少年・壱岐雄介(三浦春馬)と再会する。
彼が九州オープンの駅伝に出場するので、わざわざ東京から観戦に来る。思いがけなく雄介のチーム・メイトから給水の手伝いを頼まれる。8人抜きで彼が走ってくる。奈緒子は必死でペットボトルを差し出すが、雄介は驚き走り抜ける。
「純粋にお前に出した水を拒否した。みんながつないできたタスキを、お前は拒否した」
脱水症状で担ぎ込まれた病院で意識が戻った雄介に向かって、波切島高陸上部の監督である西浦(笑福亭鶴瓶)がそう言い放つ。隣りにいる奈緒子から二人の因縁を聞かされたからだ。彼の父親が「日本海の旋風」と呼ばれた駅伝の選手で、同じ陸上部だったからだ。
西浦の提案で、奈緒子は夏の合宿を手伝う。部員全員にとってハードなトレーニングが続く。雄介と同級の吉崎が脱落しそうになる。信じれば走れると西浦がカツをいれる。雄介が反発する。奈緒子は彼のあとを追って走るだけだ。
西浦が倒れる。療養所に担ぎ込むと、末期がんの診断を受ける。気持が先走る雄介は、奥田(柄本時生)らチーム・メイトから反感を買う。
西浦が戻ってくる。監督のために走ると雄介が宣言する。
高校駅伝長崎大会が開催される。
1区で坂道に強い吉崎がかけ登る。2区でお調子者の奥田がこけるが、「雄介につなげ」と言ってタスキを渡す。次第に勝利への想いが膨らんでいく。
アンカーの雄介が諫早学院の黒田とデッドヒートを繰りひろげる。諦めかけたとき、奈緒子が並走する。彼女の必死な姿に勇気づけられ、黒田に追いつく。ゴールで待ち受けるチーム・メイトへ向かって、雄介がトップで飛び込む。
監督と雄介が抱き合う。奈緒子も加わる。全員が覆いかぶさって喜び合う。
(注釈2)
「不況というのは、金儲けのためだけに生きている経営者や、自分たちの地位だけを守ろうとする官僚、それに対して何もできない無力な政治家たちのせいで、たくさんの人たちが仕事を失い、貧乏になることです。」
笑えという業務命令以外なら殺しすらやりかねない家政婦の三田灯(松嶋菜々子)は、有須田家の次女で幼稚園に通う希衣から尋ねられ、そう答える。
まるでNHK「こどもニュース」の池上彰のような解り易い解説だ。
有須田家の家長と4人の子供たちに向かって、ついに灯は自分の過去を語り始める。
「私が初めて紹介所の所長さんから最中をいただいたのは、希衣さんと同じ歳の頃でした。
……その1年前、近所の川で溺れそうになった私を救おうとして、大好きだった父が死にました。
それ以来、母は心のどこかで最愛の夫を殺した娘を憎み、避けるようになりました。
(中略)
残された母や、主人の両親は、
『お前が悪い、お前のその笑顔が結局みんなを不幸にする。もう謝らなくていい、何もしなくていい、ただ、もう、死ぬまで2度と笑うな』と」
(注釈3)
話は飛躍するようだが、僕は再生医療テクノロジー、とりわけiPS細胞の応用に期待している。
もしこの細胞で助けられる命があれば、真っ先に救いたい人たちがいる。
人の命を救おうとして犠牲になりかけた人たちだ。
ご承知の通り、この世は救い難いくらい不平等である。
金にモノを言わせて万全を期する経営者たち、権力やコネを使って割り込む政治家や高級官僚たち、彼らは先進治療をいち早く受ける可能性がある。
どうせ不平等なら、せめて奇特な人くらい優先して救ってやりたい。悲劇からその人の家族を救えるからだ。
注釈1、「歩いても 歩いても」(脚本、監督:是枝裕和)
日本映画 2008年製作
音楽:ゴンチチ
キネマ旬報ベストテン助演女優賞(樹希樹林)受賞
ブルーリボン賞監督賞、助演女優賞受賞

メーカー:バンダイビジュアル
メディア:DVD
「ブルーライトヨコハマ」(歌:いしだあゆみ)
注釈2、「奈緒子」(監督:古厩智之)
日本映画 2008年製作

メーカー:アミューズソフト・エンタテインメント
メディア:DVD
注釈3、「家政婦のミタ」(TVドラマ)
日本テレビ 2011年10月~12月放映

メーカー:バップ
メディア:DVD-BOX
コメント ( 2 )
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遂にブっ込んで来ましたね!「家政婦のミタ」が全体のいい楔の役目をしてます。ちょっと導入(マクラ)の最後が唐突で不自然だったように思うんですが、読んでいくとどうしてそうなったのかがすぐ理解出来ました!タイトルも・・・坂本さんの意向もあるとは思いますが・・・今回はちょっと内容の広がり具合からいっても付けにくいですね。今回の映像は「家政婦のミタ」だけでなくどれもいい。特に高校駅伝のスライドショーは感動した。ゆずの歌もとても切なくて良かった。順番として、「家政婦のミタ」をもう少し早く出して、ラストで高校駅伝を見たかった。きっと鶴瓶もいい演技してるんだろうな。たまたまなのか、前作のマラソンネタ(因みにこれも面白かったが!)と繋がってますね。ネタのひとつひとつは俺が今まで見たシネワンブログの中で一番良かったが、タイトル含め導入部分、あとは全体の構成が課題だと思った。最後になりましたが「家政婦のミタ」は以前私がメールに書いた2つの特に重要な回(それがどこかは云ってないが!)のうちの見事に1つを使ってきましたね!
そのタイトルですよ!さすが!!ほんのあとひと捻りで全然違うって事ですね。最初からだともっと良かったが、今後に期待してます。