ジョン・マクレーンの吹替は、野沢那智さんが最高!

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ジョン・マクレーンの吹替は、野沢那智さんが最高!
introducing 「ダイ・ハード」
終始しゃべりまくっているアメリカのコメディ映画が好きな僕は、どんなに好きな俳優でも時々声優の吹替で見たくなる。ヒアリングがまったくダメなせいだが、しゃべっている内容の半分も字幕で伝えていないからだ。特にコメディの場合、おかしさの大半も伝わらない。
個人的な趣味で言えば、「アニー・ホール」のウディ・アレンの声を演じた波佐間道夫、「恋人たちの予感」のビリー・クリスタルを演じた井上和彦が好きだ。
だが何と言っても、KING OF 声優は、野沢那智さんだ。
こんばんは、マンハッタン坂本です。


野沢那智さんの訃報を知ったのは、彼が亡くなって6時間後だった。
マイケル・ジャクソン以外に本物に会ったことがないせいか、どんなに好きな俳優や監督が亡くなっても、作品が残っている限り不滅だと思っている僕は、それほど大きなショックを受けなかった。だがヤバイと思った。野沢那智さんがジョン・マクレーンの声を演じた「ダイ・ハード」のビデオカセットのテープが切れているからだ。
不覚にも僕は、1989年に日本で公開になった「ダイ・ハード」を封切りで見ていない。アクション映画の最高傑作と確信したのは、1991年に「日曜洋画劇場」で放映されたときである。
特に、ブルース・ウィリスとレジナルド・ベルジョンソンとの、トランシーバーでのやりとりが絶妙だ。それを録画したビデオカセットが再生できない!
僕にとって、そのビデオカセットが宝物なのは、野沢那智版の「ダイ・ハード」が商品化されていないからだ。
「トムとジェリー」は、台詞が少ないにもかかわらず、オリジナル吹替でないためにDVDを買わない人がいる。「空飛ぶモンティ・パイソン」は、オリジナル吹替が商品化されて買い直した人が多い。
超不器用で知られる僕は、セロテープとミニ・プラス・ドライバーを握りしめ恐る恐るビデオカセットをバラしにかかった。一部ぐしゃぐしゃになったテープを引き伸ばし、片方のロールに繋ぐ。ケースを元通りにしようとするが、うまくはまらない。やっとの思いで継ぎ合わせた。
ビデオデッキとDVDプレイヤーの一体型再生機を使ってハードディスクに落とすため、修理したビデオカセットを挿入する。数秒間映像が再生されたあと、動かなくなった。
ウィキペディアによると、野沢那智さんの吹替はアドリブが多かったという。
ジョン・マクレーン刑事と黒人警官アル・パウエル巡査とのやりとりの中にアドリブとおぼしき台詞を捜してみた。
ジョン「(ロビンソン副本部長に向かって)でしゃばり? 手前こそ家に帰ってクソして寝ろ! 手前に任せてりゃ解決するもんも解決しねえ。引っ込んで、アルを出せ」
アル「……ロイ、気分はどうだ?」
ジョン「ムカつくぜ。今の野郎」
アル「よう、ロイ。愛してるよ。他のみんなもお前の味方だ。だから頑張ってくれ、いいな。へこたれるなよ」
ジョン「ありがとよ、相棒」
ジョン「子供は何人いるんだ?」
アル「実はもうすぐ初めての子が生まれるとこだ。君の方はカウボーイ、牧場には子供がいるんだろ?」
ジョン「ああ、二人。いつかお宅の子供も一緒に馬で遊ばせてやりたいね
アル「約束だぜ、カウボーイ」
アル「ジョン・マクレーン、無事でいるか?」
ジョン「ああ。来年のクリスマスはニューヨークで過ごしたいね。……また二人かたづけたぜ」
アル「そりゃ喜ぶやつが多いぞ。何人殺るか賭けてるんだ」
ジョン「俺が生き残る確率は?」
アル「聞かない方がいい」
ジョン「20ドル賭けといてくれ、張り合いが出る」
ジョン「アル。ちょっといいか」
アル「何だ、ジョン」
ジョン「何だか嫌な気分になってきた。ひとつ頼まれてくれるか? 俺の女房を探して、その気になればすぐに見つかる。そして伝えて欲しいんだ。彼女に俺は……俺は、時間はかかったが、自分はどんなにバカだったか判ったと。何で、あの時、女房がビッグチャンスをつかもうとした時、何で反対したのか、ほんとは励ましてやるべきだった。……クソ、こう伝えてくれ。彼女は俺の一生で最高のものだったと。……愛してるってことは腐るほど言ったが、すまんと言ったことはない。だからあんたから是非伝えて欲しい。ジョンがすまない、て言ってたと。頼んだぞ」
アル「分かった、ジョン。だが自分で言え。もうひと踏ん張りだ、お前ならやれる」
ジョン「運を天に任すしかない」
結局僕は、ナッちゃん(野沢那智さんの愛称)の声が入ったビデオカセットを家から歩いて10分ほどの修理屋に持ち込んだ。
そして翌日、再生できるようになった吹替音声とDVDの英語字幕を交互にチェックしたのが、以上のやりとりである。
僕は自分の声が嫌いだ。特に録音された自分の声を聴くのは耐えられない。
そのせいか、僕と同じように髪が薄く、僕より11日だけ年下のブルース・ウィリスがナッちゃんの声で日本語をしゃべるのが大好きだ。カッコいいし、コミカルだし、早口だ。
ナッちゃんが残した業績の数々、とりわけ声だけで残した偉大な遺産は、計り知れない。僕のような一介の吹替洋画ファンには語りきれない。
TVドラマ・ファン、アニメ・ファン、演劇ファン、「パック・イン・ミュージック」を中心とした往年の深夜放送ファン、などなど。ナッちゃんの話芸のサポートを受けたあらゆるジャンルのファンを魅了し続けたからだ。
ナッちゃんの「声の遺産」もさることながら、生の言葉で彼から大きな教訓を得たことがある。
熱心なファンではなかったが、チャコちゃんこと白石冬美さんと「パック・イン・ミュージック」(通称、ナチチャコパック)をやっている頃だ。
番組がちょうど10年目に突入したときで、10年目のナントカ特集をやっていた。ナッちゃんは、10年続けていくことの難しさをしみじみと語っていた。
何かを10年やり続けることで一人前になるのではなく、やっとスタート地点に立てるのだ、と痛感した。1976年、僕がまだ21歳のときである。

その教訓を生かし、小説の中で僕はこう記した。
「僕の人生はすべてをあきらめた頃前進する。それはたとえば、10年間歌い続けた歌手が転職を考え出した頃に突然歌がヒットするとか、結婚して10年も経つ夫婦が二人だけの人生設計を立て始めた頃に突然子供にめぐまれるとか、そういった大きな転機を迎えたからではない。せいぜいヒッチハイクをあきらめて歩き出した途端に車が停まってくれたという小さなあきらめと小さな前進を意味している。そしてその繰り返しによって、僕はこの10年間を乗り切ってきた。
(中略)そして1984年、僕は3ヶ月間君を捜しまわった揚句、君はもうこの街にはいないことを悟り、すっかり再会をあきらめていた。ところが例外なく小さな前進が訪れたのだ。」
そして主人公は、捜しまわっていた君との短い再会と長いお別れによってもたらされた喪失感を味わったあと、新たな人生を歩み出す決心をする。
世の中は次第にしかも確実に絶望的な状況に陥ってきている。おそらくそれを食い止めることは、坑内カナリヤ作家であるカート・ヴォネガットが言ったように、氷河を食い止めるくらい容易い作業だろう。
それでも何かに希望を見出し、健気に生きていくことしか方法がないように思う。
この世で健全さを保つことは至難の技だからだ。
 
そして僕は今からの人生を生きていくための希望を真実(主人公の恋人の名前)に見出そうと思う。消しそこねた夢の断片をつかむようなことだが、今は真実がいてこそ僕なのだ。」
「日曜洋画劇場」と淀川長治氏の映画解説、ナッちゃんが乗り移った名優の演技によって、僕は初めて映画の楽しさを知った。
KING OF 声優、野沢那智さんは不滅です。ご冥福をお祈りします。

僕が10年以上続けてきたこと。独り身であること。映画を見続けたこと。作品を書き続けたこと。酒を飲み続けたこと。自慢できることは何もない。
このブログを10年以上続ければ、本物になるのかもしれない。
どんな本物になることやら。
ちなみに、野沢那智版の「ダイ・ハード」を復活させてくれたのは、熊本市大江にある「三好家電サービス」の飯田敏男さんです。
                    連絡先 TEL/FAX (186)096-371-4012
驚いたことに、レーザーディスク、ビデオCD、CDV、8ミリビデオ(ムービーは不可)、カセットテープ、LP、SPなど、ほとんど絶滅したメディアの再生機を修理してくれる。
※一部、部品が入手できない機種は不可。
「ダイ・ハード」(監督、ジョン・マクティアナン)
        アメリカ映画 1988年製作 原題:Die Hard
        配給:20世紀フォックス
        キネマ旬報ベストテン第1位
        日本アカデミー賞最優秀外国作品賞受賞
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  1. domino

    おひさですぅ。
    Twitterは辞めましたけど、
    シネワンはちゃんと見てますからね、
    更新よろしくお願いしますね(笑)。
    1票入れられないし。
    野沢那智さんはちょっとショックでした。
    アル・パチーノなんかも当ててらっしゃいましたよね?。
    しかし「ダイ・ハード」は羨ましい・・・。
    以上、元8階のバイトのOでした!。
    また来まぁす。