革命児と呼んでくれ!

La liberté guidant le peuple
La liberté guidant le peuple / Tomas Caspers

新春・自選パロディ集 PARTⅠ
革命児と呼んでくれ!
introducing 「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」「戒厳令」
もしも君たちが、ホントのことを知りたいんならばだな、まず、僕がどこで生まれたかとか、チャチな幼年時代はどんなだったかとか、そんなことしゃべりたくないんだな。
何故って僕は革命児なんだ。何歳になっても革命児なんだ。革命児だって歳とったら勲章もらえるんだぜ。だから肉食系男子とか九州男児とか呼んで欲しくないね。
何が情けないかってさ、何歳になっても女子会なんて言ってワイワイ集まって来る連中さね。タバコすぱすぱ吸うは、酒はガンガン飲むは、訳分かんないイカレタ言葉使って言いたい放題ガールズ・トークやってるかもしんないだけどさ、僕はそんなこと興味ないんだ。男子会とかやらかすつもりはない。
第一、あんな連中に限ってチャチな映画の話しかしないんだぜ。おつむの弱い女子が好きな映画くらいきらいなものもないな。イケメンかなんか知らんけど、見てくれだけでカッコつけた大根役者が出てる映画をキャーキャー言って話してる。
僕の前じゃ、そんな映画のことは口に出さないでくれ。


じゃあ何がチャチじゃない映画だって? そんなの訊いたってどうせ見るわけないだろ? だから教えないよ。まあひとつふたつなら教えてやってもいいけどさ。
「秘密の金魚」っていう奴だ。革命的な短編映画だな。だって自分の金魚をどうしても人に見せたがらない子供の話なんだ。どうして人に見せたがらないかというと、自分の金で買ったからだっていうんだな。これには参ったね。
あと監督のL・Bがフランスで撮った映画なんか愉快だな。何が愉快かって、いつも欲求不満なとこだよ。特にいやったらしいブルジョアをコケにしてるとこがいいね。確かにフランス革命成功させたのはブルジョアの連中だよ。あの頃の連中ってそれなりにロマンがあったからね。でも今の連中はどうもいただけないね。
南米のなんとかって国の大使(フェルナンド・レイ)とテヴノ夫妻とデヴノ夫人の妹とがディナーに招待されてセネシャル邸へ行くんだ。するとガウン羽織った夫人が出てきて、主人は外出中だし明日だって言うんだな。
仕方ないから近くのレストランへ行き中に入ると、すすり泣く声が聞こえてくる。店の主人が死んだばかりで葬儀屋がまだ遺体を引き取りに来ないんだ。だから一人が帰ろうと言い出すよ。
改めていつものメンツでセネシャル邸へランチ行くんだけど、二人ともなかなか姿を現さない。実を言うとセネシャル夫妻はベッドでイチャイチャやってて、夫人の声が大きいからって裏から抜け出したんだな。ゲストたちがメイドに尋ねると、走って庭の植木の中へ消えたとか言うから、身の危険感じて慌てて退散するんだ。
女3人でコーヒー待ってるときなんか若い騎兵中尉がテーブルにやって来て、いきなりやつのチャチな幼年時代の話をおっ始めるんだ。11歳のとき、死んだばかりの母親の亡霊が出てきて、お前の本当の父親は殺されたって言うんだな。父親が寝る前に飲むミルクに誰かが毒を入れたみたいだけどさ。
やっと全員そろってディナーになるんだけど、今度はドカドカと騎兵隊の連中が家に入って来るんだ。一日早く演習が始まったとか平気な顔で大佐が言ったね。慌ててテーブル用意するんだけど、伝令が来る。緑軍の奇襲とかですぐまたバタバタと出て行っちゃう。近くで大砲をバンバンぶっ放すもんだからうるさくてね。お詫びに大佐がディナーに招待したけどさ。
6人そろって大佐のアパートへ行ってテーブルで待ってると、いきなり紅い幕が開くんだ。そこは舞台の上で観客が拍手するんでビックリだ。夢だけどね。
仕切り直しで、大佐のパーティへバラバラに行ったよ。何故か大使に声かけてくる連中が祖国のスキャンダルばっかり口にするんだ。ホストの大佐まで言い出すもんだから大使が切れちゃってさ、拳銃をぶっ放すんだ。これまた夢だけどね。
ホロホロ鳥のランチ待ってると警察がやってきて、理由もなく全員連行されるんだ。これは夢じゃないよ。大使が内務大臣に電話して釈放されるけどさ。
ハーブ入りのポタージュと羊の股肉のディナーで、6人はやっとありつけるんだ。でもマシンガン持った強盗が押し入ってくるんだ。素早く隠れた大使以外、あっという間に銃殺だ。
大使がテーブルの下から羊肉取るとこを見つかるんだけど、銃口向けられてもむしゃむしゃ食べてるんだよ。これには参ったね。
結局強盗も夢なんだけど、何だか6人が田園の中一本道ひたすら歩いてるシーンだけがさ、ホントのことに思えたよ。
   (注釈1)

日本なんて昔から合戦ばっかりやってて、革命なんか輸入品くらいにしか思ってないかもしんないんだけどさ、革命やろうってした連中はいるにはいたんだな。60年代のチャチな全学連とか赤軍とかじゃないよ。北一輝ってオヤジだ。
先に言っとくけど、オヤジが大正12年(1923年)に発表した「日本列島改造論」じゃなくて「日本改造法案大綱」てのがあって、長いこと右翼のバイブルみたいになってたけど、僕は右でも左でも真ん中でもない、革命児だからね。オヤジは日蓮宗信者の革命家ってとこだ。
北一輝(三国連太郎)のオヤジは大乗妙法蓮華経7冊を天皇というか東宮殿下に献上するんだけど、宮内庁から白紙の受領書が届くんだな。天皇制を逆手にとった国家社会主義者に対して微笑ながら挑戦を受けるってわけだ。
おまけに、安田財閥の創始者である安田善次郎を刺殺して自殺した朝日平吾って奴の血染めの着物が届くんだ。自分の書いたやつがテロリストにも影響与えたってわけだ。やっこさん困ったけど、ちゃっかり三井財閥を恐喝する道具に使ったけどね。東京憲兵隊長の岩佐がはりついてたけど。
「偉大な人間はすべて、革命家なのだ」
しょうがないから、オヤジは息子に向って言ったね。しかも革命家って革命やるんじゃなくて、革命に耐える者だっておいでなすったよ。
「陛下がご存知であるということを、お断りすることはできません」
昭和維新をおっ始めるかどうか密談してる屋敷の長い長い塀の前で、物乞いしてる盲目の傷痍軍人からオヤジはそう言われるんだ。やっこさん計画に対して私ならやらないとか言ってたし、愛弟子の西田税も参加しなかったし陸軍も手を引いてたけど、怯えたね。
でも昭和11年(1936年)に、オヤジの思想に感化されちゃった青年将校たちが二・二六事件をおっ始めるんだよ。一個師団に相対できるだけの弾薬を持った1400名の近衛歩兵連隊が革命軍になって「戒厳令」をひくんだな。もっともオヤジに言わせれば正義軍なんだけどさ。つまり正義によって脅迫するって意味だな。それがいつの間にか反乱軍扱いになって帰順しちゃうわけだ。
チャイナ服着て仏間にこもって朝に夕べに法華経の読誦(どくじゅ)三昧してたにもかかわらず、オヤジの家に憲兵隊が迎えにくるんだな。万事休すってやつさ。
それでもって国家転覆罪で東京陸軍刑務所で銃殺になる前に、隊長の岩佐に言われちゃうんだよ。これには参ったね。
「陛下は、この事件を含めてすべてを、あなたをチャチな策謀家にするために用意なさったのですから。それが、陛下の、あなたへのお慈悲です」
   (注釈2)

今から僕らが何をやらかすかって? 決まってるだろ、革命児だから革命だよ。
君たちは、僕の口調が野崎孝が翻訳したホールデン・コールフィールドとか庄司薫に似てるからって、「ライ麦」チルドレンとか思ってるかもしんないけどさ、あいつらは世界史ちゃんと勉強してないへタレだよ。革命が成功するかしないか何も判っちゃいないから、ちっちゃな女の子ひとりまともに助けられないんだ。
アメリカの連中みたいにデモやってる場合じゃない。フランスの連中みたいに「憤り」を露わにしてる場合じゃない。
僕らは日本人だから、ニッポンで革命を起こすしかないんだ。革命起こして今の政府を倒さなきゃ誰もホントにやんなきゃなんないことをやんないじゃないか! 福島や関東だけが汚染されてるわけじゃない。日本中が内部被曝の危険にさらされてるんだぜ。
僕らが今一番守んなきゃなんないのは、ニッポンの子供たちだよ。ホールデンみたいにひとりでチャチなライ麦畑で頑張っても、たかが知れてるよ。今生きてる子供たちを守んなきゃニッポンの未来はないんだぜ。
だから革命やるっきゃないんだ!
革命が成功した暁には、まず今の天皇一族に京都に転勤してもらうよ。もともと明治の初めまで住んでたんだから、いまば里帰りみたいなもんだ。悪くないだろ?
何でもかんでもバカみたいに関東に集中してんだから、拡散させるっきゃないんだよ。そのためには象徴として、いの一番で移住してもらうしかない。そうすりゃ有形無形、いろんなもんが関東から離れていくさね。
それから危険な地域に住んでる子供たちは安全な地域に集団疎開させるんだ。知らず知らずのうちに危険な地域なんてどんどん広がってるんだぜ。何よりも汚染されてる食い物や飲み物を与えちゃいけないのは、子供たちだろ?
何十年かかるか分かんないような故郷の除染とか復興なんて30歳以上の大人に任せとけばいいんだよ。
僕らがしでかそうって革命が、欲求不満解消のチャチな策謀だと思うかい?
戒厳令.jpg 注釈1、「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」(監督:ルイス・ブニュエル)
      フランス映画 1972年製作 英題:The Discreet Charme of the Bourgeoisie
      米アカデミー賞外国語映画賞受賞

      メーカー:ジェネオン・ユニバーサル
      メディア:DVD
注釈2、「戒厳令」(監督:吉田喜重)
      日本映画 1973年製作 仏題:Coup d’etat
      脚本:別役実

      メーカー:ジェネオン・エンタテインメント
      メディア:DVD

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