バレエ・ダンサーは、お芝居もお上手。
バレエ・ダンサーは、お芝居もお上手。
introducing 「F[エフ]」「センターステージ」「赤い靴」
「Shall we ダンス?」の冒頭、アダム・スミスの言葉を引用してこう宣言している――「舞踊と音楽は、人間自身の発明した、もっとも最初にして初期的な快楽である」
映画を通して、僕は世界中のダンスが好きになった。「Shall we ダンス?」のボール・ルーム・ダンス、「フラガール」のポリネシアン・ダンス、「愛と呼ばれるもの」のカントリー・ラインダンス、「ムトゥ 踊るマハラジャ」のボリウッドダンス、などなど。
芝居を本職とする俳優がプロ並みのダンスを披露する映画はゴマンとある。歌って踊るミュージカル映画を除いてもだ。
ただ、現役のダンサーが映画に出演して本物のダンスをやるのは当然だが、意外なことに芝居も捨てたものではない。
「Shall we ダンス?」に出演当時、現役のバレエ・ダンサーとして見事な社交ダンスを披露した草刈民代は、バレリーナ引退後に本格的に女優活動を始めた。
(注釈1)
こんばんは、マンハッタン坂本です。
「F[エフ]」は、当時英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルだった熊川哲也が本業と同じ設定で映画初出演を果たした。違うのは、古瀬郁矢という役名で練習中に骨折して帰国したことになっている。のちに札幌での公演中、図らずも彼は全治6ヶ月の怪我を負った。
覆面DJ「F」としてラジオのリクエスト番組を始めた古瀬は、片隅のヒカルと名乗るOL(羽田美智子)から、浴衣美人と車で一緒だった人ではないか、といきなり指摘される。祭りの日、機械いじりの得意なヒカルがイン・ロックした車を解除し、中学からの同級生の章吾(野村宏伸)と古瀬のマネージャーが待つスタンドまで車を送り届けたからだ。その間、古瀬は本業を落第したFだと漏らしていた。
古瀬の正体を知らず、番組を通してやりとりするうちに、お互いに一目惚れだったことに気づく。だが危機感を抱いた章吾は、生放送でヒカルにプロポーズをする。
バレエ・ダンサーであることを公表した古瀬から、ヒカルは公演に招待される。省吾を裏切るようで躊躇するが、かろうじて最終幕を観る。
公演後、野外音楽堂の椅子に座ったヒカルの前で、普段着に戻った古瀬が踊って見せる。
ヒカルは、両親を亡くしたばかりの中学生のとき、同じ場所で楽しそうに踊っていた子供を思い出す。そしてそのときと同じことを言う――「なんか元気出てきた。ありがとう。」
(注釈2)
「センターステージ」で、プレイボーイなクーパー役を演じたイーサン・スティーフェルは、今でもアメリカン・バレエ・シアターのプリンシパルである。
ジョディ(アマンダ・シュール)は決してバレエ向きの体型ではない。キラリと輝くダンスが認められ、ABTの付属アカデミーに合格したものの、欠点だらけを指摘され落ち込む。気晴らしにブロードウェイのスタジオでジャズ・ダンスを踊ってみる。
その伸び伸びとしたダンスを見たクーパーは、いっぺんで彼女を気に入り、ハーレー・ダビッドソンに乗せ自宅まで誘う。卒業発表会のクラス分けでも、自分が振り付けをする新作のメンバーに選ぶ。
「感情を踊りに込めろ」
クーパーに遊ばれたことを知ったジョディは、稽古中に反抗的な態度をとるが、彼女に気がある同期のチャーリー(サシャ・ラデッキー)がそう言って励ます。
本番は、マイケル・ジャクソンの「The Way You Make Me Feel」に合わせてハーレーから降り立ったクーパーのソロから始まる。
ジョディをめぐる火花を散らすチャーリーとクーパーのダンス攻防のあと、全身薄紅色のコスチュームに身を包んだジョディが20回転を超えるフェッテで締めくくる。
斬新でパワフルな舞台は拍手喝采に包まれる。
(注釈3)
「赤い靴」でビクトリア・ペイジを演じたスコットランド生まれのモイラ・シアラーは、現在のロイヤルバレエ団で10年以上に渡りプリンシパルを務めた。バレリーナ引退後も「ホフマン物語」などに出演している。
ボリス・レルモントフ(アントン・ウォルブルック)にとって、彼のバレエ団は人生のすべてだと言っていい。
そんな彼の前に、ネストン夫人から紹介されるはずだったビクトリアが現れる。なぜ踊りたいのかと問うと、生きることと同じだと彼女は答える。その夜、彼の自宅に新作バレエの曲は自分の盗作だと訴える若者が押しかけて来る。ジュリアン・クラスター(マリウス・ゴーリング)である。ボリスはジュリアンの才能を見抜き、副指揮者として雇い入れる。
「愛に慰めを求めるような人間は、偉大な踊り手にはなりえん」
小さなバレエ団で踊っていたビクトリアを見てパリ公演のメンバーに選んだボリスは、彼女が群舞を待つ舞台の袖で、振付師に向かって聞こえよがしにそう言う。
アンデルセンの「赤い靴」をモチーフにした新作をジュリアンに作曲させ、パリ公演を最後に結婚で去ったプリ・マドンナの後釜にビクトリアを抜擢する。
音楽があれば問題ない、と開幕直前で怖気づく彼女を送り出す。
終始中心で踊り続ける赤いトウシューズのビクトリアは愛らしく、
リアルなステージ映像とフィルムによるマジカルな映像とがオーバーラップして、観る者をうっとりとさせる。
舞台は大成功に終わる。だが愛し合ったビクトリアとジュリアンはボリスのもとを去る。
あきらめきれないボリスは、封印した「赤い靴」を踊りたいと願う彼女を誘惑する。ジュリアンは、自作のオペラの指揮を投げ捨て彼女を取り戻しに来る。
二人の間で心を引き裂かれたビクトリアは、思わず列車に身を投げる。
(注釈4)
周知のとおり、草刈民代がフルヌードを披露した「バレリーヌ」が話題となった。
僕にとって、「バレエ・カンパニー」を監督したロバート・アルトマンの「プレタポルテ」のラストで、スーパーモデルがフルヌードでショーをやり、デザイナー役のアヌーク・エーメがモデルたちに囲まれ登場したとき以来の衝撃だった。
ついでながら、僕にとって最高のバレエを披露した女優は「花とアリス」の蒼井優である。高校の制服を着て踊ったアラベスクは、プロ顔負けだった。
(注釈5)
ちなみに、映画以外でもっとも好きなのは、アイルランドのリバーダンスだ。ニューヨークでの公演は初期の傑作だが、ダブリンで行った100人超のパフォーマンスも圧巻だった。
(注釈6)
舞踊と音楽は、酔っ払いが発明した、恒久的な快楽である。
注釈1、「Shall we ダンス?」(監督:周防正行)
日本映画 1995年製作 英題:Shall We Dance
日本アカデミー賞最優秀作品賞、主演男優賞(役所広司)
主演女優賞(草刈民代)、監督賞など全13部門受賞
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注釈2、「F[エフ] 」(監督:金子修介)
日本映画 1998年製作
原作、鷺沢萌「F 落第生」
日本アカデミー賞新人俳優(熊川哲也)受賞
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注釈3、「センターステージ」(監督:ニコラス・ハイトナー)
アメリカ映画 2000年 原題:Center Stage
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注釈4、「赤い靴」(監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー)
イギリス映画 1948年製作 原題:The Red Shoes
振り付け:ロバート・ヘルプマン
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注釈5、「花とアリス」(監督:岩井俊二)
日本映画 2004年製作
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