落語なんて本物を見るに限る
落語なんて本物を見るに限る。
introducing 「の・ようなもの」「しゃべれども しゃべれども」「寝ずの番」
NHK朝ドラの「ちりとてちん」のお陰で再ブームとなって以来、全国各地で落語を生で見られる機会が増えた。実に結構なことだ。しかしながら、ドラマの中で俳優が演じる落語は、お世辞にも面白いとは言えない。観客に大受けするほどには。
むしろ落語に出てくるキャラクターを、ドラマの登場人物が分担して演じる世界の方が面白かった。映画化作品で言えば、「幕末太陽傳」が最高傑作である。
ドラマ「ちりとてちん」が面白いのは、落語家や落語家を取り巻く人々の普段のやりとりが落語の世界だからだ。徒然亭若狭の母親役の和久井映見なんかピカイチである。
(注釈1)
こんばんは、マンハッタン坂本です。
「の・ようなもの」の志ん魚(しんとと)(伊藤克信)は、二ツ目の駆け出し落語家。観客がみんな寝てしまうくらい下手くそなので、新作をやってみないかと師匠に言われる。古典をなぞるとせっかくの面白味が小さくなる。自然体の方が圧倒的におかしいからだ。
弟弟子に落語がつぶれることはないですかねと訊かれて、彼は言う――「そのときは日本だってつぶれるさ」
女子高の落研の部員・由美と初めてデートする。彼女の家で落語を披露するが、父親からも彼女からも下手くそと言われる。
終電がなくなり、浅草まで歩いて帰る志ん魚。道すがら、目に入る下町の風景や名所をいちいち描写する姿がいじらしかった。
(注釈2)
「しゃべれども しゃべれども」の三つ葉(国分太一)も、二ツ目の売れない落語家。師匠から俺のいいとこ盗りにすぎないと言われるが、ひょんな縁で三人の素人に落語を教える羽目になる。話し方教室で知り合った無愛想な美人・十河(香里奈)、関西から転校してきたやんちゃな小学生・村林、口下手な野球解説者・湯河原(松重豊)。
はじめから落語に興味があって集まった連中ではない。教室というより、お互いの欠点を突っ込み合う場になる。それでも三つ葉は十河をほおずき市に連れて行ったり、湯河原は村林にライバルを倒すためのバッティングを指南する。落語教室を切っ掛けに、今までの自分を変えたいという想いがあるからだ。
何とか自分の持ち味で「火焔太鼓」を演じきった三つ葉は、大成功に終わった発表会のあとで、三人に向かって言う――「たまんなく好きだったけど、もっと好きになった」
(注釈3)
「寝ずの番」の上方、笑満亭一門には立て続けに不幸が訪れる。
師匠の橋鶴(長門裕之)は、死に際に「そそが見たい」と言う。慌てて連れて来た三番弟子の橋太(中井貴一)の若いヨメは、パンツなしで師匠の顔の上を跨ぎスカートをまくり上げる。そそっかしい一番弟子の橋次(笹野高史)が「外が見たい」を聞き間違えたからだ。
通夜の寝ずの番は、志津子姐さん(富司純子)と五人の弟子、その連れ合いらによる師匠の裏話で盛り上がる。師匠のクソ漏らし事件やハワイでの偽物マリファナ・パーティ、などなど。挙句に、師匠の十八番「らくだ」の死人のカンカン踊りで大騒ぎになる。
橋次が急死したあと、志津子まで後を追う。姐さんの寝ずの番は、一番慕っていた橋太にとって辛いものがあった。だが、志津子の芸者時代に師匠と張り合った鉄工所の元社長(堺正章)が飛び入りし、三味線による座敷歌対決や下ウタ合戦で大いに盛り上がる。
夫婦になる決め手となった師匠の志津子へのプレゼント歌を元社長が披露したあと、全員で涙ながらに歌い上げる。
「おいら噺家はよ~、どいつもこいつもどアホやが~、
義理と人情にやあついやつ~、笑わば笑えよ~」
(注釈4)
この世は、生きている者のために存在する世界である。落語は、生きている喜びを与えてくれる存在のような気がする。
落語の「ちりとてちん」の中で、知ったかぶり男を懲らしめる相談を始める前に、銘酒を酌み交す場面がある。実に美味そうに演じている。
「幕末太陽傳」の中で、落語の「お見立て」に出てくる花魁とおぼしきキャラクターを演じた南田洋子さん。
(注釈5)
「二ツ目の分際で、名人とは生意気でげす」と師匠から怒られたことのある、5代目三遊亭圓楽さん。
二人が相次いで亡くなって、早一年が経った。
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注釈1、「ちりとてちん」(NHK連続テレビ小説)
日本TVドラマ 2007年10月~2008年3月放映

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注釈2、「の・ようなもの」(監督、脚本:森田芳光)
日本映画 1981年製作
ヨコハマ映画祭作品賞、新人監督賞受賞
注釈3、「しゃべれども しゃべれども」(監督:平山秀幸)
日本映画 2007年製作
ヨコハマ映画祭脚本賞(奥寺佐渡子)受賞
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注釈4、「寝ずの番」(監督:マキノ雅彦)
日本映画 2006年製作
原作:中島らも
注釈5、「幕末太陽傳」(監督:川島雄三)
日本映画 1957年製作
ブルーリボン賞主演男優賞(フランキー堺)受賞
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