エリック・サティを聴きながら、アルコールに溺れてみたい。

Drunk Driving Kills
Drunk Driving Kills / Rennett Stowe

エリック・サティを聴きながら、アルコールに溺れてみたい。
introducing 「鬼火」「酒とバラの日々」
1888年、のちにドビュッシーやラヴェルに影響を与えることになるフランス・クラシック界の異端児であるエリック・サティは、代表曲「三つのジムノペディ」を作曲する。
そのとき彼は22歳で、偶然にも僕がこの曲を初めて聴いたのも22歳のときである。
宙ぶらりんな大学生だった僕は、漂うような不思議な曲調に魅了された。
1977年、作曲されて89年後だった。
こんばんは、マンハッタン坂本です。


パリの名門コンセルヴァトワールの堅苦しい音楽教育が性に合わず中退したエリック・サティは、モンマルトルの酒場でピアノ弾きとして生計を立てる。
そして晩年、「家具の音楽」という思想を提唱した。
ATG映画にハマって大学を中退した僕は、宙ぶらりんなその一年を「MEMORIES’77」というタイトルでラジオドラマ化し、インターミッションに「ジムノペディ第1番」を使った。
それ以外は台詞の洪水だったので、図らずも「BGMなドラマ」となる。
 (注釈1)
Trois Gymnopedies by エリック・サティ

1977年、全編にエリック・サティの音楽を使ったフランス映画が公開された。ルイ・マル監督の「鬼火」である。製作されてすでに14年が経っていた。
アラン・ルロワ(モーリス・ロネ)は30歳で、アル中である。若い頃の放蕩がたたり療養所生活をおくっている。
昔を知る者からやつれたと陰口をたたかれるが、育ちがいいだけあって服装はパリッとして男前だ。アメリカに別れた妻がいるが、多くの美しい女性から愛されている。
昔の放蕩仲間と会うため、アランは久々に古巣のパリに戻る。
「友人だろ。僕を愛してくれ。今のままで」
家族と学問だけが生き甲斐となったエジプト学者の友人から、平凡に満足しろとさとされるが、アランはそう言って突っぱねる。
「祭りは終った」
芸術家の友人(ジャンヌ・モロー)には、そう囁く。
「墓の上に寝たのがなぜおかしい。下なら誰でもできる」
凡庸極まりない上流階級の友人たちとの晩餐で、酔っ払った自分をからかわれ、アランは喰ってかかる。
絶望とは、誰からも愛されないことだ。自分が誰も愛さなかったように。
変わり果てた友人たちに、それぞれの言葉で自殺をほのめかすが、誰も真に受ける者はいない。
結局、遺書を書き終えると、アランは銃口を心臓に向ける。
「僕は自殺する。君たちが僕を愛さず、僕も君たちを愛さなかったからだ。だらしない関係を緊め直すために、僕は自殺する。君たちに拭い難い汚点を残していく――」
 (注釈2)

ジョー・クレー(ジャック・レモン)は、仕事のストレスからアル中になる。取引先の接待に明け暮れていたからだ。そして飲み友だち欲しさにチョコレート好きだった妻までアル中仲間にする。
彼は二度も更生施設に入り、立ち直って娘を育てるが、妻は最後まで酒を断つことができない。
にもかかわらず、タイトルは「酒とバラの日々」である。
ヘンリー・マンシーニ作曲の甘美なコーラスだけが救いだ。
 (注釈3)
Days of Wine And Roses by ヘンリー・マンシーニ

                                                「酒とバラの日々」のブレイク・エドワーズ監督が昨年88歳で亡くなった。
軽妙・洒脱なコメディを得意とする監督だったが、珍しくシリアスな作品である。
米アカデミー賞は歌曲賞のみ受賞したが、ジャック・レモンが主演男優賞、リー・レミックが主演女優賞にノミネートされ、高く評価された。
孤高のダンディリズムに憧れて、30年以上も生き残った。
アルコールと仲良くしたせいだ。溺れることのない「酒とバラの日々」を過ごしたいからだ。

注釈1、「ベスト・オブ・サティ」(演奏者:アルド・チッコリーニ)

      メーカー:TOSHIBA EMI
      メディア:CD
注釈2、「鬼火」(監督:ルイ・マル)
      フランス映画 1963年製作 原題:Le Feu Follet
      原作、ピエール・ドリュ=ラ=ロシェル
      ヴェネチア映画祭審査員特別賞受賞。

      メーカー:IVC
      メディア:DVD
注釈3、「酒とバラの日々」(監督:ブレイク・エドワーズ)
      アメリカ映画 1962年製作 原題:Days of wine and Roses
      米アカデミー賞歌曲賞(ヘンリー・マンシーニ)受賞

      メーカー:ワーナー・ホーム・ビデオ
      メディア:DVD

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