親バカは感染する。
親バカは感染する。
introducing 「闇の子供たち」「続・激突!/カージャック」「赤ちゃん泥棒」
無神論者イヴァン・カラマーゾフは、敬虔なクリスチャンであるアレクセイに問う。
「神がいるのであれば、どうして虐待で苦しむ子供たちを神は救わないのか?」
タイガーマスクこと伊達直人がランドセルをプレゼントした養護施設に収容された子供たちの大半が、親の虐待から逃れてきたのだという。
フョードル・ドストエフスキーが言うところの神は、大審問官に問われるイエス・キリストのことだが、国産の神は「千と千尋の神隠し」に出てくる八百万(やおよろず)の神である。
伊達直人は孤児院出身のプロレスラーで神ではない。
全国各地で名前を変えて寄付が行われるムーブメントを見ていると、いかにも八百万の神を信望する日本人らしい善意を感じる。
こんばんは、マンハッタン坂本です。
一方、同じ日本人でも血をわけた我が子を溺愛する余り、モンスター・ペアレントと化する親たちがいる。
その犠牲者は、クレームを受けた教育者ではなく、案外子供の方かもしれない。
ところが、臓器移植を必要とする病に侵された子供を持つ親は、別の意味でモンスターと化す。なぜなら、日本では15歳未満の臓器提供を受けられないからだ。
心臓移植を必要とする8歳の息子を持つ梶川(佐藤浩市)は、5000万円を用意し、タイで手術を受ける予定である。子供の体力がないため半年以内にやらなければならない。
そんな彼の自宅に、タイで人身売買の取材活動をする新聞記者の南部(江口洋介)と清水(豊原功補)、現地の社会福祉センターでボランティア活動をする恵子(宮崎あおい)が訪れる。
極貧故に親が売り払った健康な子供を闇ルートで入手し、生きたまま殺して臓器移植を行う医者が執刀することを突き止めた南部は、その事実を記事にしないわけにいかない。
だが梶川夫婦に感情的に詰め寄った恵子のお陰で、取材ができなくなる。
見て見ぬふりをするんですか?、と責める恵子に対し、清水は答える――「同じことが起こらないように、見て、見たことをありのまま書くんだ」
努力の甲斐があって南部は、梶川の息子が入院したバンコクの病院に、犠牲となる子供が入るところの撮影に成功する。
恵子は、ボランティア組織と地元警察と共に、幼児売春のために囚われの身となった子供たちを救い出す。
(注釈1)
万引きと窃盗の罪で8ヶ月服役し出所したルー・ジーン(ゴールディ・ホーン)は、実の息子を里親から引き取ることを福祉局に拒否される。思い余りテキサス州囚人更生訓練所で服役中の夫のクロヴィス(ウィリアム・アザートン)を訪ねる。
トイレで私服に着替えさせた夫をまんまと脱獄させた彼女は、便乗した老夫婦の車を乗っ取り、追いかけて来たハイウェイ・ポリスのスライド巡査(マイケル・サックス)を人質にしてパトカーで逃走する。目指すは里親に預けられた息子がいるシュガーランド。
追いかけるタナー警部(ベン・ジョンソン)の後ろには、テキサス中からパトカーが集まってくる。
移動トイレでの待ち伏せに失敗し、スナイパーの狙い撃ちも諦め、抜けがきしたパトカーのミスで玉突き事故となり、ルー・ジーンたちのパトカーを見失う。
中古車センターで一夜を明かしたスライド巡査は、ルー・ジーンに向かって、君はワルじゃない、心も優しい、道を間違えただけだ、と言う。自分の子供を取り返したい一心の彼女は、ゴールドスタンプ集めの好きな能天気な若い母親にすぎない。
予備役と称する連中から攻撃を受け逆上した二人は、シュガーランドまで手を出さず見守るようタナー警部に承諾させる。
「子供はあなたのよ。手放しちゃダメ」
沿道には野次馬があふれ、町を通ると差し入れと激励の雨が降ってくる。
二人のパトカーの後ろには、2百台近くのパトカーと数百台の自家用車が続く。
里親の白い大きな屋敷の前まで来る。ワナだと言ってスライド巡査がルー・ジーンを守るが、クロヴィスはスナイパーに撃たれる。
暴走した車が止まったとき、クロヴィスは息絶え、ルー・ジーンは茫然自失となる。
だが15ヵ月後、彼女の元に息子が戻ってくる。
(注釈2)
刑務所に勤務する婦人警官のエド(ホリー・ハンター)は、失恋したばかりのとき、入所してきたハイ・マクダノー(ニコラス・ケイジ)に一目惚れされる。彼がコンビニ強盗で頻繁に出入りするうちにゴールインする。
真面目に働き出したハイと子づくりに励むが、不妊症と診断される。夫の前科が災いし養子ももらえない。絶望し仕事も辞める。そんな折も折、家具チェーン店のオーナー、ネイサン・アリゾナ家に五つ子が誕生したというニュースが飛び込んでくる。
ネイサン家の2階で、どの子を選ぶか悩むハイ。一旦諦めて車に戻るが、妻にせっつかれ、育児書と一緒にネイサン・ジュニアを連れてくる。エドはあまりの可愛さに泣きながら喜ぶ。我が家で記念写真を撮る。
「家族ができたぞ」
仕事の上司とケンカした反動で、ハイは昔の癖が出る。オムツを手に入れるため強盗を働く。おまけに、ムショ仲間の2人組が脱獄して家に押しかけて来る。銀行強盗に誘うためだ。
エドの留守中、赤ん坊を盗んだことに気づいた2人組は、ハイを縛り上げ、銀行へと向かう。だがハーレー・ダビッドソンに乗って追いかけて来た完全武装の賞金稼ぎに赤ん坊を奪われる。
離婚を決意しながらも、エドはハイと共に賞金稼ぎに立ち向かう。
再びハイは、エドを伴いアリゾナ家の2階を訪れる。育児書と一緒にジュニアを返すためだ。ネイサン・アリゾナに見つかるが、子供ができなくても別れることないさ、とさとされる。
(注釈3)
親バカは感染する。子供を手放した親にも、子供のできない夫婦にも。
幼児虐待も感染する。大人になれない親が子供を育てるからだ。貧困がそれを後押ししているかもしれない。
2011年、1月15日、生後19日でニューヨークの病院から連れ去られたカーリナ・ホワイトさんが23年ぶりに実の両親と再会した。拉致した薬物中毒の女から虐待を受けながら、彼女は育ったという。
人種と宗教の坩堝であるアメリカにおいて、誰が本当の神かなんて考える方がナンセンスだ。
この感動的な再会は、何はともあれ「神の思し召し」だと思う。
僕はと言えば、「いま、ここ」において、最高の酒にありつけることが「神の思し召し」だ。
日本で劇場公開された「激突!」は、スティーブン・スピルバーグ監督のデビュー映画ではない。アメリカではTV映画として放映され、「続・激突!/カージャック」が本来のデビュー作である。
原題のTHE SUGARLAND EXPRESSをもじった「オレンジロード急行」(1978年製作)で、大森一樹はシナリオ・ライターの登竜門として新設された城戸賞を受賞し、商業映画の監督としてデビューした。
そのとき僕も応募したが、当然落選した。
注釈1、「闇の子供たち」(監督、脚本:阪本順治)
日本映画 2008年製作 英題:Children of the Dark
原作:梁石白
主題歌:桑田佳祐「現代東京奇譚」

メーカー:ジェネオン・エンタテインメント
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注釈2、「続・激突!/カージャック」(監督:スティーヴン・スピルバーグ)
アメリカ映画 1974年製作 原題:The Sugarland Express

メーカー:ジェネオン・ユニバーサル
メディア:DVD
注釈3、「赤ちゃん泥棒」(監督:ジョエル・コーエン)
アメリカ映画 1987年製作 原題:Raising Arizona

メーカー:20世紀フォックス・ホーム・エンターテインメント・ジャパン
メディア:DVD
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