ぼやくな、売れない物書き。

Mark Coggins – BW / Mark Coggins
ぼやくな、売れない物書き。
introducing 「アメリ」「ティファニーで朝食を」「ブロードウェイと銃弾」
ツイッターの僕のイラストを初めて見せられたとき、35年前のオレじゃん、と思った。悪い気はしない。10年前までやっていた動画で映画紹介をするイベント、オリジナルのシネマ・ワンダーランドのために相方が描いたイラストの予想外のデフォルメだったからだ。
このイラストは、伝説のディスコ・ダンサー、ソウル・ステップのクリエイターであるニック岡井のイメージに近い。「氷の世界」が爆発的に売れていた頃の井上陽水を意識したわけではないが、35年前の僕はアフロ風に髪が爆発していた。そして集まった若者がニック岡井の編み出したステップで踊る新宿のディスコに通っていた。
そんな僕が今や売れない物書きである。
こんばんは、マンハッタン坂本です。
映画の世界では、売れない物書きにもかかわらず、何故か見てくれのいい役者を使う傾向にある。
カフェ「ドゥ・ムーラン」に出入りする小説家は、見た目は平凡な紳士だ。彼はある日、カフェのマダムに売れない小説を献上する。
それを覗き見したウェイトレスの「アメリ」は、小説の一文を壁に落書きする――「君がいないと、僕の心は、愛の抜け殻」
アメリの化身というべきジャン=ピエール・ジュネ監督らしいイタズラだ。
(注釈1)
九つの作品を収録した短編集を出版したものの、その後書けなくなった小説家のポール・バージャック(ジョージ・ペパード)は、かなり二枚目で男めかけだ。彼は「ムーン・リバー」をギターでつま弾くホリー・ゴライトリー(オードリー・へプバーン)が住むニューヨークのアパートに越してき、彼女に恋をし、小説が売れた途端にパトロンと別れる。
(注釈2)
映画版「ティァファニーで朝食を」に登場する作家は、明らかに「ナイン・ストーリーズ」を書いたJ・D・サリンジャーを意識している。
(注釈3)
原作者のトルーマン・カポーティは、名刺に「旅行中」と記すくらい自由気ままなホリーのハッピーエンド映画に激怒したようだ。
ちなみに、アカデミー賞作品賞を受賞した「アニー・ホール」で、セントラル・パークのベンチに座ったウディ・アレンは、一緒のダイアン・キートンを笑かすために「トルーマン・カポーティのそっくりさんだ」と男に向って言う。実は本物が出演した。
「ムーン・リバー」(歌:オードリー・へプバーン)
自称アーティストの劇作家デビッド(ジョン・キューザック)は、ヒットとは無縁の重い作品ばかり書く。
エージェントは仕方なく、ギャングのボスに出資させるために踊り子出身の愛人オリーブ(ジェニファー・ティリー)を出演させる条件を飲む。
救い難いくらい下手くそなオリーブにじっと我慢するデビッドにとって唯一の救いは、落ちぶれたとはいえ、大物女優ヘレン(ダイアン・ウィースト)からの称賛である。
だが彼女は、思い切りデビッドを持ち上げて気にいらない部分を書き直させ、芝居を牛耳っていく。
あるリハーサルの日、オリーブが台詞にケチをつけたのを切っ掛けに、彼女の用心棒のチーチ(チャズ・パルミンテリ)が話の展開に口を出してくる。
ところが、彼のアイデアが出演者にもスタッフにも大好評で、デビッドは書き直すハメになる。
「初稿と比べると、別人が書いたような成長ぶり」
ヘレンはデビッドを手放しに絶賛する。それもそのはず、デビッドが自信をなくす度にチーチが秀逸なアイデアを出し、いつしか彼が台本の大半を書き直していたからだ。
才能があるのは、リアルな言葉を知っているギャングの方だった。
「誰にも言わねえよ、そういう稼業だ」と言いつつもチーチは、自分の作品かのようにのめり込んでいき、芝居を守るために邪魔であるオリーブを撃ち殺してしまう。
そのことがボスにバレ、大成功をおさめたブロードウェイ初日公演のさ中、銃弾に倒れる。デビッドに幕切れの感動的な台詞を言い残して。
アーティスト気取りだったデビッドは、故郷に帰る決心をする。
(注釈4)
この作品の大きな魅力は、人生のすべてが芝居がかったヘレンである。二人きりになってデビッドが何かを告白しそうになる度に、「何も言わないで」とやたら繰り返す仕草がお茶目だった。
監督のウディ・アレンは、世界中の多くの映画人に尊敬される脚本家でもある。
デビッドのような自虐的なキャラクターを創造することにかけては天才的だ。
ところで、売れない物書きもそう悪くはない。何かと口実をつけて酒が飲める。
夢のある映画を観ようじゃないか。
「ティァファニーで朝食を」のブレイク・エドワーズ監督が88歳で亡くなった。
彼は、祖父も父も映画界で働く映画一家の出身にもかかわらず、始めのうち売れない映画監督だった。
1959年、ケイリー・グラント、トニー・カーティス主演の戦争コメディ「ペティコート作戦」で実力を発揮し、「ティファニーで朝食を」を大ヒットさせた。人気シリーズ・ピンクパンサー(「ピンクの豹」「暗闇でドッキリ」「ピンクパンサー2,3,4,X,5」)では、すべての脚本も手がけ、ヘンリー・マンシーニが音楽をつけた。ご冥福をお祈りします。
「ピンクパンサー・フィルム・コレクション」DVD-BOXジャケット
メーカー:20世紀・フォックス・ホーム・エンターテインメント
メディア:DVD
Henry Mancini Pink Panther Theme
注釈1、「アメリ」(監督、脚本:ジャン=ピエール・ジュネ)
フランス映画 2001年製作 原題:Le Fabuleux Destin d’Amelie Poulain
仏セザール賞作品賞、監督賞、音楽賞(ヤン・ティルセン)美術賞受賞
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注釈2、「ティファニーで朝食を」(監督:ブレイク・エドワーズ)
アメリカ映画 1961年製作 原題:Breakfast at Tiffany’s
米アカデミー賞劇音楽賞、主題歌賞(ヘンリー・マンシーニ)受賞
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( 舞台はNY。宝石店ティファニーに憧れ、ショーウインドーの前でパンをかじるのが大好きなコールガールは、人なつこくてかわいい女性。同じアパートに越してきた青年作家は、そんな彼女に次第にひかれていくが、彼女には秘密があった…。<br> コールガールを演じても下品にならない、オードリー・ヘップバーンのキュートでエレガントな魅力が絶品だ。ジョージ・ペパードも、いかにも人のよさそうな好青年ぶりで、ヒロインに振り回される役がピッタリだ。原作はトルーマン・カポーティ、監督は『ピンクパンサー』シリーズでおなじみのブレイク・エドワーズ。エドワーズ監督の軽妙なタッチと、オードリーの都会の妖精のような、ふんわりとした軽やかさがマッチした、心地よいラブストーリーだ。(斎藤 香))<br />
ティファニーで朝食を [DVD] / オードリー・ヘプバーン, ジョージ・ペパード, パトリシア・ニール, バディ・イブセン (出演); トルーマン・カポーティ (原著); ジョージ・アクセルロッド (脚本); ブレイク・エドワーズ (監督)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/5158F71ZRPL._SL160_.jpg)
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注釈3、「ナイン・ストーリーズ」(著者:J・D・サリンジャー)
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( 1953年に出版されたサリンジャーの自選短篇集。「グラース家の物語」の発端となるシーモアが登場する「A Perfect Day for Bananafish」、WASP中心のアメリカ社会で助けあいながら生きていくユダヤ人親子を描いた「Down at the Dinghy」、男女の不倫を描いた「Pretty Mouth and Green my Eyes」など、9つの作品が収められている。中には、ドイツ製のルガー拳銃の性能を証明するために、ヒヨコの頭を撃ち抜いたヘミングウェイの残忍性を風刺して書かれたといわれている、次のような作品もある。 <blockquote>ノルマンディー上陸作戦に向けて3週間続いた特殊訓練を終えたX軍曹は、喫茶店で1人の少女に声をかけられる。先ほど教会の児童合唱隊で、ひときわ美しい声で歌っていた少女だ。さびしそうにしていたから声をかけてみたと言う少女と、彼はつかの間の平穏なときを過ごす…。やがて戦争は終わるが、X軍曹は心身ともに深い傷を負う。ある日、彼は手元にあった小包を開く。中にはあのときの少女からの手紙と、彼女の父親の形見である腕時計が入っていた。2人が共に過ごした時間は、長い人生においてはほんの一瞬のできごとに過ぎない。それでも、少女の手紙には、彼に安堵の眠りと魂の救済をもたらす不思議な力があった。(「For Esme-with Love and Squalor」)</blockquote> <br> 発表以来、精神分析や東洋思想などの立場から、さまざまな文学的解釈がなされている短篇集であるが、読み物としても十分おもしろい。何年かたってから読み直せば、以前は見えなかったものが見えてくるような、味わい深い作品である。(小川朋子))<br />
ナイン・ストーリーズ (新潮文庫) [文庫] / サリンジャー (著); 野崎 孝 (翻訳); 新潮社 (刊)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/416EBEXR8PL._SL160_.jpg)
出版社:新潮社
メディア:文庫本
注釈4、「ブロードウェイと銃弾」(監督、脚本:ウディ・アレン)
アメリカ映画 1994年製作 原題:Bullets Over Broadway
米アカデミー賞最優秀助演女優賞(ダイアン・ウィースト)受賞
ゴールデングローブ賞助演女優賞受賞
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( 20年代のブロードウェー。ギャングの親分に自分の情婦を舞台に出せと脅されたり、主演女優のワガママに振り回されたりしながらも、上演を目指す新人作家の激動の日々を、ウディ・アレン監督が笑いたっぷりにつづっていく。落ち目なのにプライドだけは人1倍の女優を演じるダイアン・ウィースト、演技がドヘタなギャングの情婦を演じるジェニファー・ティリー、本物の作家よりも脚本の才能がある用心棒チャズ・パルミンテリなど、ユニークなキャラクターをしっかり自分のものにした役者陣がすばらしい。 <br> 20年代の華やかなブロードウェイの雰囲気と、アレンならではのウィットに富んだ会話が楽しめる、大人のコメディーである。ウィーストは本作でアカデミー助演女優賞を受賞した。(斎藤 香))<br />
ブロードウェイと銃弾 [DVD] / ジョン・キューザック, ジェニファー・ティリー, ダイアン・ウィースト, ジャック・ワーデン (出演); ウディ・アレン (脚本); ウディ・アレン (監督)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/21WM83SFGFL._SL160_.jpg)
メーカー:パイオニアLDC
メディア:DVD
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