鳥になりたいなんて気が知れない!


鳥になりたいなんて気が知れない!
introducing 「鳥」「終身犯」「グース」
太古の昔から、人類は鳥のように飛びたいと様々な挑戦をしてきた。
「素晴らしきヒコーキ野郎」の冒頭を見ると、実にバカバカしくコミカルである。腕に翼をつけたり、ロケットを背負ったり、やっとヒコーキらしき機械を発明するが、ことごとく失敗する。
  (注釈1)
高所恐怖症の僕なんか夢の中でさえうまく飛べそうにない。
「未来世紀ブラジル」のサム・ラウリーのように、宙に浮かぶ美女に向かって気持よく空を飛んでいても、突然田園地帯からレンガづくりのモノリスが次々と生えてきて、突き落とされそうになる。
  (注釈2)
バードウォッチングすら興味がない。
明け方不吉に泣きわめくカラスが一番嫌いだ。前の日から生ゴミを出すなと注意されたからではない。
こんばんは、マンハッタン坂本です。


ヒッチコックの「鳥」は、生ゴミの代わりに人間を襲う話だ。
ボデカ湾に住む弁護士のミッチ・ブレナー(ロッド・テイラー)が待つ船着場に向かって、メラニー(ティッピ・ヘドレン)がモーターボートを走らせる。すると突然一羽のカモメが彼女の頭をつついて飛び去る。
彼女は、鳥のペットショップで知り合ったミッチの妹のためにラブバードの入った鳥かごを届けた帰りだった。
妹のキャシー(ヴェロニカ・カートライト)の誕生日パーティで、大量のカモメが子供たちを襲う。ついでミッチの家の暖炉から大挙してスズメが侵入する。
メラニーが小学校の前でタバコを吸っていると、あっという間に校庭のジャングルジムにカラスが集まってくる。カラスの大群が襲いかかり、必死になって子供たちと逃げる。
鳥の攻撃でガソリンスタンドが炎上する。身を守るために逃げ込んだ電話ボックスからメラニーは助けられる。そしてほうほうの体でダイナーに戻ると、住民からなじられる。
「どこから来たの? あなたのせいよ。魔女だわ」
ミッチの家に立てこもる。無数の鳥の鳴き声が大きく響き渡る。ドアを突き破ろうと鳥が攻撃してき、電気が消える。
鳥の羽ばたきがひとつになる。メラニーは恐る恐る屋根裏部屋のドアを開く。一斉に鳥たちが襲ってくる。全身傷だらけになり気を失う。
放心状態のメラニー。家族と共にミッチが鳥の海に車を漕ぎ出したのは、その直後だった。
  (注釈3)

嵐の夜、監獄の運動場で「終身犯」のロバート・ストラウト(バート・ランカスター)は、ひなの鳴き声を耳にする。折れた木の枝に残ったスズメの巣からだ。腹をすかせて泣き続けるひなのために、バッタやゴキブリを潰して与える。
やがて成長したランティーは、母親と思い込んでいるロバートに叱咤され、空を飛べるようになる。
「砂ほこりを立てて、自由に飛んでゆけ。自然を謳歌しろ」
独房の窓からランティーを送り出すロバート。彼は初めから終身犯ではなかった。殺人罪で服役中、母親との面会を邪魔する看守を刺したからだ。母親の献身的な運動のお陰でかろうじて絞首刑は免れたものの、看守以外は顔を合わせられない独房生活である。
スズメのランティーが舞い戻ってくる。ペットの飼育を許可されたロバートの独房の中は、カナリアの鳥かごで一杯だ。だが治療法のない敗血症でバタバタと鳥たちが死んでいく。ランティーまで倒れる。
途方に暮れたロバートは、何とか治療法を見出そうと試行錯誤を続ける。ついに特効薬を発見する。その作り方を書いた論文が愛鳥家を喜ばせる。
長年にわたって親切な看守のランサムから顕微鏡をプレゼントされる。それを機に彼は本格的に研究を始める。そして次々と鳥の難病の治療法を発見し、世界的な鳥類学の権威まで上りつめる。
だが突然ロバートはアルカトラズ刑務所に移される。彼の業績は認めたものの、ペット飼育禁止令を出したとき、彼を敬愛する未亡人のステラと獄中結婚することで、マスコミを扇動し阻止したからだ。
ついにアルカトラズ島から開放される。
ロバートは広くて快適な監獄に移れる喜びを小説の原作者に向かって言う――「鳥のように羽ばたく」
  (注釈4)

渡り鳥が営巣するカナダのオンタリオ湖畔。自作のハンググライダーで空を飛ぶ男がいる。芸術家で発明家のトーマス(ジェフ・ダニエルズ)である。そんな父親の様子を14歳のエイミー(アンナ・パキン)があきれ顔で眺めている。事故で母親を亡くして以来10年ぶりに戻って来たのだ。
彼女はある日、16個の「グース」(鵞鳥)の卵を見つける。沼地の開発を進めるブルドーザーに親鳥が追い払われたからだ。
孵化したひなが初めて目にする動くものは、エイミーの笑顔だった。グースたちは幼い母親のあとしかついて行かない。
成長して飛べるようになり冬になれば、渡り鳥は南下する。行き先を知らない子供たちを先導するのは母親の役目だ。
トーマスは、超軽量で長時間飛行ができるハンググライダーを開発する。エンジンを搭載し、グースそっくりにデザインした大きな翼と頭や尾羽までついている。
「湖を超え、国境を渡り、飛行届けも出さず、州の許可もなく、大変だぞ」
ママ・グース号に乗ったエイミーに向かって、パパ・グース号のトーマスが無線で励ます。
二人はノース・カロライナを目指して500マイルの旅に出る。途中、空軍から未確認飛行物体と間違われ、密猟者に狙われ、コースからそれ高層ビルの間を飛んでいく。
目的地を前にパパ・グース号が不時着する。エイミーはひとり大空を飛び続ける、グースたちと共に。
大地に影を落とし、連なって羽ばたく鳥たちは美しかった。
実写に勝るものはない。一緒に飛んでいるようで、久々に感動した。
  (注釈5)

「私の心は鷹のように大空を飛ぶ」
「小さな巨人」に出てくるアメリカ・インディアンの酋長の口癖である。
僕だってそんな心境になることがある。大抵酔っ払っているときだ。
  (注釈6)
話題になっている太田光の「マボロシの鳥」を読んでみた。
残念ながら、彼と同じようにカート・ヴォネガット(彼の所属事務所名「タイタン」は、ヴォネガットの「タイタンの妖女」から拝借している)やウディ・アレンを敬愛する僕としては、表題作は期待外れだった。
映画で言えば、「無能の人」(つげ義春をモデルにした漫画家がラストで鳥になって飛び去る)や「火の鳥」(原作、手塚治虫)や「アマデウス」(落ちぶれた作曲家アントニオ・サリエリが主人公)を連想させる。
極めて饒舌で説明的な表現の数々。話芸が達者なお笑い芸人が書いたお話で、どうひいき目に見ても、小説になっていない。表題作だけで判断させてもらえれば、ヴォネガットやアレンのシリアスなスラプスティック(ドタバタ喜劇)には程遠い。
今回のブログのテーマにも程遠かった。
注釈1、「素晴らしきヒコーキ野郎」(監督:ケン・アナキン)
イギリス映画 1965年製作 
原題:Those Magnificent Men in their Flying Machines

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注釈2、「未来世紀ブラジル」(監督:テリー・ギリアム)
イギリス映画 1985年製作 原題:Brazil
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注釈3、「鳥」(監督:アルフレッド・ヒッチコック)
アメリカ映画 1963年製作 原題:The Birds
原作、ダフネ・デュ・モーリア
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注釈4、「終身犯」(監督:ジョン・フランケンハイマー)
アメリカ映画 1962年製作 原題:Bird Man of Alcatraz
原作、トム・ガディス
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注釈5、「グース」(監督:キャロル・バラード)
アメリカ映画 1996年製作 原題:Fly Away Home
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注釈6、「小さな巨人」(監督:アーサー・ペン)
アメリカ映画 1970年製作 原題:Little Big Man
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