加藤和彦。「歌」で、乗り越えたこと。
加藤和彦。「歌」で、乗り越えたこと。
introducing 「パッチギ!」「カーテンコール」
1965年に加藤和彦が結成したザ・フォーク・クルセダーズは、自主制作したアルバム「ハレンチ」を最後に解散するはずだった。ところがアルバムの中の「帰って来たヨッパライ」が大ヒットし、一年間限定で活動を再開する。
同じアルバムに収録した「イムジン河」をセカンド・シングルとして13万枚プレスしたが、直前に発売中止となる。
(注釈1)
急きょその代わりに発売したのが、サトウ・ハチロウ作詞、加藤和彦作曲の「悲しくてやりきれない」である。
当時中学生だった僕は、生れて初めて自分の小遣いでそのレコードを買った。
こんばんは、マンハッタン坂本です。
1968年、松山猛は朝鮮学校の友人から教えてもらった美しい曲に訳詩をつけ、仲の良かったフォークルのメンバーにその歌を紹介する。
「イムジン河」は、北と南に分断された朝鮮の地で、いつかまた人々が自由に行き来できる平和な日が訪れることを願って作られた歌である。
「パッチギ!」は、松山猛が書いた「少年Mのイムジン河」が原案となっている。
(注釈2)
親善サッカーの試合を申し込みに京都の朝鮮高校を訪れた康介(塩谷瞬)は、耳に入る美しいメロディに惹きつけられ、ふらふらと音楽室へ行く。そこにはフルートを吹く可愛いキョンジャ(沢尻エリカ)がおり、彼女に一目惚れをする。
楽器屋でたまたま知り合った坂崎酒店の息子(オダギリジョー)から、その曲は「イムジン河」という題名だと教えられる。「ハレンチ」を聴きながら、歌の由来やその想い、日本軍の朝鮮侵略について聞かされる。
何とかキョンジャとつき合いたい康介は、坂崎からギターの手ほどきを受ける。必死でその歌を覚え朝鮮語の挨拶も覚え、在日の人たちが宴会をする公園に押しかける。運よく彼女と「イムジン河」を共演でき、以後、彼女と彼女を取り巻く朝鮮高校の連中と仲良くなる。
ところが、事故で死んだ彼女の同級生チェドキのお通夜で、彼の伯父(笹野高史)から追い出される。
「お前らニッポンのガキ、何知ってる? わしらは、お前らと違うんやぞ」
朝鮮高校の連中が、地元の不良高校生と大阪からの助っ人連合軍と鴨川で喧嘩をしているさ中、康介はラジオ局で悔し涙を流しながら歌い上げる。
「イムジン河空遠く 虹よかかっておくれ 河よ想いを 伝えておくれ
ふるさとを いつまでも 忘れはしない イムジン河水清く とうとうと流る」
それを聞いたキョンジャは、康介をラジオ局まで迎えに行く。
お互いの隔たりがなくなり、お互いの心が溶け合った瞬間、「あの素晴しい愛をもう一度」が流れる。
(注釈3)
「あの素晴しい愛をもう一度」(歌:加藤和彦&北山修)
「カーテンコール」では、在日韓国人が日本のヒット曲を感動的に歌ってくれた。
タウン誌の記者、香織(伊藤歩)は、一通の葉書を切っ掛けに古い映画館「みなと劇場」を取材する。昭和30年代に映画と映画の幕間に歌や形態模写をやっていた芸人の話を聞き出すためだ。
売店で古くから働く宮部(藤村志保)から、その幕間芸人のエピソードを聞く。修平(藤井隆)が初めて舞台に出た切っ掛け、彼のファンだった良江とのなれそめなどを聞くうちに、本人に会いたくなる。
だが調べていくうちに、彼が在日韓国人で、昭和45年の最後の舞台直後に妻を亡くし、小学校を出たばかりの娘の美里を捨て故郷に帰ったことが分かる。
結婚して息子のいる美里(鶴田真由)を取材し、本当は父親に会いたがっていると感じた香織は、在日の同級生の協力を得て、韓国の済州島で修平を探し当てる。
みなと劇場の閉館の日、修平(井上堯之)は30年ぶりに舞台に立つ。葉書を出した美里の夫と孫が見守る中、現役当時繰り返しギターで弾き語りをした歌を、枯れた声で穏やかに歌う。
「言っているいる お持ちなさいな いつでも夢を いつでも夢を」
小さい頃両親と一緒に弁当を食べた映画館のロビーで、美里は悲痛な思いで聞き入っていた。
(注釈4)
「いつでも夢を」(歌:吉永小百合&橋幸夫)
発売中止となった「イムジン河」は、34年後の2002年にシングルとして再発売になった。
国家間や人種間のみならず、いつの時代でも、人間は平等ではなく、人間同士は偏見に満ち満ちている。それをお互いの歌だけで乗り越えることは不可能だ。
だが加藤和彦は、「イムジン河」を通して、あるいは彼の音楽人生を通して、それを乗り越えようとした。その試み、その作品は多くの人に受け継がれている。
乗り越えられなかったことは、知る由もない心の弱さだったかもしれない。
2010年、10月16日、一周忌を迎える。
死の謎より、残した功績について語りたい。加藤和彦さんが好きだったワインを飲みながら。
注釈1、「ハレンチ」(歌:ザ・フォーク・クルセダーズ)
注釈2、「少年Mのイムジン河」(著者:松山猛)
注釈3、「パッチギ!」(監督、脚本:井筒和幸)
日本映画 2004年製作
音楽、加藤和彦
キネマ旬報監督賞、新人女優賞(沢尻エリカ)受賞
日本アカデミー賞新人俳優賞(沢尻エリカ)受賞
注釈4、「カーテンコール」(監督、脚本:佐々部清)
日本映画 2005年製作
日本映画批評家大賞作品賞受賞
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1年経つんですね~
いつまでも歌い継がれる曲たち
「白い色は恋人の色」が好き♪