外国人が我々を愛してくれているのはジャズのお陰だ。
ロバート・ジョンソン「クロスロード」
NO MUSIC,NO LIFE PartⅠ
「外国人が我々を愛してくれているのはジャズのお陰だ」
introducing 「スターダスト・メモリー」「クロスロード」「ラウンド・ミッドナイト」
僕がもっとも尊敬するアメリカの作家カート・ヴォネガットは、「国のない男」というエッセイ集の中で、そう断言している。
その根底にある彼の考えは、アフリカ系アメリカ人が奴隷の頃に全世界に与えてくれた贈り物はブルースだという。
今日のポップ・ミュージック――ジャズ、スウィング、ビバップ、エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、ストーンズ、ロックンロール、ヒップホップなどなど――すべてはこのブルースがルーツだと言っていい。
なぜ贈り物かと言うと、奴隷たちは自殺という疫病神を、ブルースを演奏したり歌ったりして追い払っていたからだ。
アレックス・ヘイリー原作のTVドラマ「ルーツ」のフィドラー(ルイス・ゴセット・ジュニア)のヴァイオリン演奏を聴けば歴然としている。
(注釈1)
ハイホー、マンハッタン坂本です。
僕がもっとも尊敬するアメリカの映画監督ウディ・アレンは、彼の作品の大半にジャズの名曲を使っている。
しかも「ワイルド・マン・ブルース」というドキュメンタリーでは、趣味が高じて、クラリネット奏者として自身のジャズ・バンドを率いてヨーロッパ・ツアーを実現した。
(注釈2)
僕がもっとも好きな映画のシーンには、ルイ・アームストロングのトランペットが流れている。
素敵な春の日の日曜日。公園を散歩したあと、映画監督のサンディ(ウディ・アレン)が部屋でくつろいでいる。大好きな「スターダスト」をかける。ふと目を上げると、ドリー(シャーロット・ランプリング)が寝そべって雑誌をめくっている。
彼女を見つめながら、サンディは彼女への愛を強く実感する。
「美しい曲と春のそよ風と彼女の美しさが混然一体となって、一瞬すべてが完全に調和した」
サッチモの歌声が高らかに響き渡り、至福のひとときが盛り上がる。
(注釈3)
ルイ・アームストロング「スターダスト」
ジュリアード音楽院でクラシック・ギターを学ぶユジーン(ラルフ・マッチオ)は、有名なブルース・マン、ロバート・ジョンソンに憧れる17歳の少年である。彼はある療養所で、録音されなかった30曲目の歌を知るブラインド・ドッグ・フルトンと呼ばれたハーモニカ奏者のウィリー・ブラウンと知り合う。
80歳近くになるウィリーの故郷はミシシッピ。ブルースを極めるため、彼が魂を売り渡す契約をした伝説の「クロスロード」がある。
ユジーンは、30曲目を教えてもらう約束で療養所からウィリーを連れ出し、バスでメンフィスに着く。それからヒッチハイクでミシシッピへ向かう途中、家出娘のフランセスと道連れになる。
「ブルースは失った女を想う、男の悲しみだ」
酒を飲み交わしながらウィリーは、そう言ってユジーンを慰める。せっかく仲良くなったのに、彼女が去ってしまったからだ。だがミシシッピに着くと、昔愛した女がすでに亡くなっていることを知る。
十字路で交わした契約を破棄するため、ユジーンはブルース・ギター対決に挑む。ウィリーのハーモニカの援護で辛くも勝利する。
かくしてユジーンのブルース・ギター修行は、ミシシッピの十字路から始まる。
(注釈4)
1959年、パリのジャズ・クラブで「時の過ぎ行くままに」を演奏するデール・ターナー(デクスター・ゴードン)は、ベテランのテナー・サックス奏者だが、赤ワインに目がない。飲み過ぎて吹けなくなるので、関係者から酒も金も遠ざけられている。
デールに心酔するデザイナーのフランシスは、演奏聴きたさに兵役中に無断外出した話をして彼と仲良くなる。ライブを撮影したり、酔いつぶれて行方不明となった彼を探し回ったり、挙句に快適に過ごさせるために広いアパートを借り一緒に暮らすようになる。
「疲れたよ。音楽以外のすべてにな」
それが口癖のデールは、9歳になる娘と一緒に公私共に面倒を見てくれるフランシスにほだされ、酒を止める。ジャズ仲間を集めてホーム・パーティを開く。ライブでもスタジオ・レコーディングでも名演奏を披露する。
だが幸福の絶頂のフランシスは、帰国すると言うデールを止められない。
誘惑の多いニューヨークまでついて行くが、やり手マネージャー(マーティン・スコセッシ)に引き渡さざるを得ない。
フランスに帰国した数日後、フランシスのもとにデールの死の知らせが届く。
「ラウンド・ミッドナイト」が悲しく流れていく。
(注釈5)
デクスター・ゴードン「時の過ぎ行くままに」
2007年にニューヨークで亡くなったカート・ヴォネガットは、こうも書いている。
もしわたしが死んだら、墓碑銘はこう刻んでほしい。
「彼にとって、神が存在することの証明は音楽ひとつで十分であった。」
かつてアメリカ人のトーマス・エジソンは速記者の代用を目的として蓄音機を発明した。
その蓄音機に端を発し、音楽普及に貢献するレコードが発明され、連続写真撮影装置キネトグラフが進化した動画撮影機によって映画が生まれた。
そして音楽と映画は、アメリカが誇る輸出産業となった。
僕自身、世界中の映画を見ることによって、世界中の素晴らしい音楽と酒を知ることできた。
そして味わうことの出来ない世界中の酒を、目の前にある一杯の酒で代用している。
注釈1:「ルーツ」(TVドラマ・ミニシリーズ)
アメリカTVドラマ 1977年ABC放映 原題:Roots
原作:アレックス・ヘイリー
エミー賞作品賞、主演男優賞(ルイス・ゴセット・ジュニア)
作曲賞(クインシー・ジョーンズ)、など全9部門受賞

メーカー:ワーナー・ホーム・ビデオ
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注釈2:「ワイルド・マン・ブルース」(監督:バーバラ・コップル)
アメリカ映画 1997年製作 原題:Wild Man Blues

メーカー:角川書店
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注釈3:「スターダスト・メモリー」(監督:ウディ・アレン)
アメリカ映画 1980年製作 原題:Stardust Memories

メーカー:20世紀フォックス・ホーム・エンターテインメント・ジャパン
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注釈4:「クロスロード」(監督:ウォルター・ヒル)
アメリカ映画 1986年製作 原題:Crossroads
音楽:ライ・クーダー

メーカー:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
メディア:DVD
注釈5:「ラウンド・ミッドナイト」(監督:ベルトラン・タヴェルニエ)
フランス・アメリカ映画 1986年製作 原題:’Round Midnight
米アカデミー賞作曲賞(ハービー・ハンコック)受賞
モデル:バド・パウエル(ピアノ)

メーカー:ワーナー・ホーム・ビデオ
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