ダメ親父に健気な娘なんていない。

together / Spirit-Fire
ダメ親父に健気な娘なんていない。
introducing 「キューポラのある街」「大阪物語」「お引越し」
現在の日本は、元気でお洒落な女子であふれかえっている。
昔はダサい映画オタクの溜り場だった名画座やミニ・シアターでも、そんな女子が珍しくなくなった。しかも一人で足しげく通ってくる。
それに引き換え、うだつの上がらない親父はどうしようもなく減らない。
もし僕に娘がいたら、と想像してみる。
やたら映画を見るだけが取柄の何もできないダメ親父の悪影響で、メチャメチャ面倒見のいい娘にちがいない。と都合よく想像したものの、間違いなくうざいと敬遠される。
もし接点を見出せるなら、「なんちゃって制服」用に親父のネクタイを使ってくれれば、御の字だ。
所詮、ダメ親父と健気な娘の組み合わせなんて、映画の世界だけかもしれない。
ハイホー、マンハッタン坂本です。
ベテラン鋳物職人の辰五郎(東野英治郎)は、故障持ちのため人員削減で工場をクビになる。
同級生の父親の世話で、娘のジュン(吉永小百合)が働き口を捜してくるが、昔気質の辰五郎には最新オートメが性に合わない。家で呑んだくれる毎日に戻る。
父親の代わりに飲み屋で働く母親の姿にショックを受けたジュンは、修学旅行をサボって夜遊びをする。おまけに不良に襲われ、すっかり元気をなくす。
だが朝鮮に帰る在日の仲良しから励まされ、働きながら夜間高校に通う決心をする。折も折、前の工場に父親の復職が決まる。
父親に面と向ってたてつくけれど、ジュンの張り切っている姿が清々しかった。
(注釈1)
長年夫婦漫才をする売れない芸人の隆介(沢田研二)は、ご多分にもれず女癖が悪く、浮気相手を孕ませしまう。ついに妻の春美(田中裕子)から離婚されるが、四軒隣りに居を構える。やがて女にも逃げられる。
そんなアカンタレな父親を持つ娘の若菜(池脇千鶴)は、腹違いの妹を世話しながら、思わずおとうちゃんはカスやと言ってしまう。それが切っ掛けで隆介が失踪し、彼女は父親を探す旅に出る。
隆介に来た手紙を頼りに、偶然出会った同級生のトオルと一緒に知人を訪ね歩く。だが父親の意外な一面を知り、驚くばかりだ。
「みんなおっちゃんの話するとき楽しそうやな」と言うトオルに対し、若菜は思わずニッコリする。
事故で入院したことが分かり、笑顔で駆けつける。すると父親がほっと苦笑いを浮かべる。
(注釈2)
自称ダメ親父の賢一(中井貴一)は、妻のナズナ(桜田淳子)と別居するための「お引越し」トラックに乗るが、学校を抜け出してきた娘のレンコ(田畑智子)までついて来る。
家族がバラバラになったことを受け入れられないレンコは情緒不安定となり、度々学校で騒動を起こし母親を困らせる。思い余って父親に電話で問い詰める。
「私はお父さんとお母さんが喧嘩しても我慢したよ。そやのに、なんでお父さんらは我慢できひんの?」
夏休みの宿題にしてくれ、と賢一が頼み込む。
何かと心配してくれる同級の男子の提案で、レンコは我が家で立てこもりを決行する。だが両親の溝は深まるばかり。ナズナは途方に暮れ、駆けつけた賢一は、娘が幼い頃大切にしていたキリンのぬいぐるみを受け取って帰る。
それでもレンコは、昨年三人で旅行した琵琶湖に無理やり母親を連れ出し、ホテルで父親と引き合わせる。
もう一度三人でやっていきたい、と賢一が訴える。レンコをバイクに乗せたとき温かったからだ、と。だがナズナは勝手やと泣きながら怒る。
「三人やったら、一人だけ休むわけいかんしな」
結局、宿題の答えはあまりにも情けなかった。
祭りの中を一人さまよい歩くレンコ。琵琶湖のほとりにたどり着き、三人で祭りを楽しんだときの情景を思い浮かべる。
(注釈3)
「ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘」という日本を代表する漫画家の娘たちによるトライアングル・トーク本を読んでみた。親父が水木しげる、赤塚不二夫、手塚治虫なら、面白くないわけがない。
暴露本的要素はあるものの、偉大な父親に対して娘なりに反発した時期を経て、現在はそれぞれ父親の作品をリスペクトしつつ、代表作のみならず隠れた名作を次世代に伝えるべく仕事に邁進しているという。
手塚治虫と赤塚不二夫の娘に関しては、父親を失ってから父親と父親の作品の偉大さを実感した、というのが印象的だった。
(注釈4)
少女はあっという間に大人に成長する。
そして父親なしでたくましく生きていく。
注釈1、「キューポラのある街」(監督:浦山桐郎)
日本映画 1962年製作
ブルーリボン賞作品賞、主演女優賞(吉永小百合)受賞

メーカー:日活
メディア:DVD
注釈2、「大阪物語」(監督:市川準)
日本映画 1999年製作
脚本、犬童一心

メーカー:ポニーキャニオン
メディア:VHS
注釈3、「お引越し」(監督:相米慎二)
日本映画 1993年製作
脚本、奥寺佐渡子(「サマーウォーズ」「時をかける少女」)
キネマ旬報新人女優賞(田畑智子)受賞

メーカー:パイオニアLDC
メディア:DVD
注釈4、「ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘」(著者:水木悦子、赤塚りえ子、手塚るみ子)

出版社:文藝春秋
メディア:文庫
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