ゴースト・ライターになりてぇ。


ゴースト・ライターになりてぇ。
introducing 「秋菊の物語」「イル・ポスティーノ」
「代書屋」てぇ職業がありまして、今で言うところの司法書士とか行政書士ですな。もっとも戦後すぐまで、読み書きできない御仁が沢山いたんで、もっぱら履歴書の代筆することが多かった。落語の「代書」もその話ですな。
「儲かった日も代書屋の同じ顔」なんて川柳もありましたっけ。
僕の好きな満島ひかりちゃんが「おひさま」でやってたのは、代筆ですな。戦地にいる夫に出す手紙を代わりに書いてやる。松本の女学校出だから、食いつなぎにそれくらい朝メシ前だ。陽子たちには出版社に勤めてるなんて嘘ついてましたが。
昔、新幹線で知り合った音大生で、マッチの「ギンギラギンにさりげなく」を作曲したのは俺だなんて豪語したやつがいまして。真偽のほどは分からんですが、そいつはいわゆるゴースト・ライターですな。有名な作曲家に自分の作品を買い上げてもらい、小遣い稼ぎする。
まあ代書屋みたいなもんです。才能さえあれば、表舞台に出なくても結構な稼ぎになる。スタジオ・ミュージシャンと同じですな。
音楽やってる連中と比べるてぇと、タレント本書いてる連中なんか稼ぎが少ないと聞きます。どうせやるんなら、相手から感謝されるような代筆屋、ゴースト・ライターがいいですな、僕なんか。
ハイホー、マンハッタン坂本です。


まるで寄席の出囃子のように、中国の古楽器を使ったチャオ・リーピンの曲が流れてくる。同じ歌と同じメロディが繰り返される度に、中国北部の農村に住む秋菊(コン・リー)は、遠くへ遠くへと出かけて行く。身重なので、毎度義妹の妹子が一緒である。
最初は、義妹が引くリヤカーに夫の慶来を乗せ、郡の医者のところへ連れていく。村長と喧嘩して股間を蹴られたため、治療してもらうためだ。
だが村長は、娘ばかりで跡取り息子がいないと言われ腹を立てており、診断書を見てもまったく謝る気がない。
仕方なく秋菊は、郡の公安局へ行き、李巡査に相談する。
村の住人に信望が厚い巡査は、治療代を含め200元を村長が支払うという和解案をまとめる。
だが村長は、秋菊の目の前で金をばらまき、一向に謝る気配がない。
頭にきた秋菊は、リヤカーに唐辛子を積み込み、県の公安局へ向かう。唐辛子を売って旅の費用に当てるためだ。
乗り合い軽トラに乗って公安局にたどり着くと、届出書が必要だという。
「~故に、殺人未遂で、村長を重罰に処すべし」
穏やかな訴えなら絶対勝てると太鼓判を押され、20元で代書屋にそう書いてもらい、提出する。
だが裁定は覆らず金を突き返した秋菊は、市の公安局へ向かう。
輪タクにボラれた二人は、親切な人の助言で都会風の上着を羽織る。緑のマフラーと作業ズボンはそのまま、頭隠して尻隠さずである。
訴えに詳しい安宿の主人の助言で、市の局長に直談判する。
だがひと冬かけたのに、罰金が50元増えただけ。裁定も村長の態度も変らない。
市の局長の助言で、訴訟のための弁護士を雇う。だが敗訴し、中級裁判所に上訴する。
産婆の手に負えない難産となった秋菊は、郡の病院に担ぎ込まれ、無事男子を出産する。
すべては助け合いの決まりを守り、先導した村長のお陰だ。
だが満ひと月のお祝いの最中、村長は公安局に連行される。レントゲンの結果が助骨骨折と判明し、軽度傷害罪で15日間の拘留となったからだ。
李巡査から知らされた秋菊は、茫然となり、走り出す――「私はスジを通したいだけ。逮捕するなんて」
   (注釈1)

1950年代、共産主義思想のため祖国チリを追放された詩人のパブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)は、南イタリアに浮かぶ小さな島に身を寄せる。
眺めのいいコテージで妻のマチルデと暮らす彼のところへ、マリオ(マッシモ・トロイージ)が遠路自転車で郵便物を届けに来る。ほとんどが世界中から送られてくるファンレターだ。
島の漁師たちと違って読み書きのできるマリオは、パブロに興味津々。本にサインをもらうだけでは満足できず、突然彼の詩を口走る。
隠喩の意味すら知らない彼に、パブロは詩の味わい方を教授する。詩人になりたいとマリオが言い出すので、浜辺をゆっくり歩けばいい、と助言する。浜辺で話していると、いつの間にか隠喩を口にするので、びっくりする。
揚句に息を弾ませ、恋に落ちたと言う。ベアトリーチェ・ルッソに。
彼女のために詩を書いて欲しいとマリオが言い出す。
「詩は君のものだ。このノートにそれを書き始めるといい」
彼にプレゼントした皮表紙のノートに、最愛の友にして同志マリオへ、と書き込んだあと、パブで働くベアトリーチェの目の前で、パブロは聞こえよがしにそう言う。
浜辺を歩く彼女に近づき、彼女を見つめたマリオは、めくるめく詩を奏でる。うっとりとする彼女の顔に蝶のような微笑が広がる。
パブロが添削した自作ではない。彼が妻のマチルデのために書いた詩だ。マリオに言わせれば、ベアトリーチェにこそ相応しいと拝借したのだ。
すっかりマリオの虜になった彼女は、晴れてパブロの立会いのもと、彼と結婚する。
祝宴の最中、パブロは帰国を許されたことを発表する。
数年後、パブロは再び島を訪れる。彼の息子とベアトリーチェしかいない。
共産党員だったマリオは、総大会で暴動に巻き込まれ命を落としたのだ。パブロに捧げる自作を披露する前に。
旧友の想い出に浸りながら、パブロは浜辺をゆっくりと歩く。
   (注釈2)
音楽:ルイス・エンリケ・バカロフ(米アカデミー賞オリジナル作曲賞受賞)

かつてワープロの時代。キャノンは、新製品の宣伝キャンペーンにビートたけしを起用した。
当時の彼は、口の悪さはダントツ。どうひいき目に見ても、きれいな字を書くキャラではない。そこでこんなキャッチコビーがついた――「この世の悪字を正したい」
今やパソコンやケータイの時代。悪字を正してプリントアウトせずに伝達できる。
何か手書きで自己表現するなら、年賀状を書くか書道パフォーマンスをやるしかない。
だが僕は、とっくの昔に年賀状も書道も辞めた。商売柄、タワーレコードのスタッフみたいに商品コメントを書くしかない。
生来、褒めるのもけなすのも苦手な平和主義者(?)なので、嘘臭くなる。
やはり恋文がいい。
もっともこのブログは、読者に対する恋文みたいなものだ。
スペシャルな人に手書きで恋文を書くのがいいのかもしれない。
そんなわけで、年甲斐もなく恋人募集中、もとい、お仕事募集中です。
                                                                マンハッタン
注釈1、「秋菊の物語」(監督:チャン・イーモウ)
     中国・香港映画 1992年製作 英題:The Story of Qiu Ju
     ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、主演女優賞受賞
     音楽:チャオ・チーピン(「さらば、わが愛/覇王別姫」)

     メーカー:東宝ビデオ
     メディア:VHS
注釈2、「イル・ポスティーノ」(監督:マイケル・ラドフォード)
     イタリア・フランス・ベルギー映画 1994年製作 英題:The Postman
     米アカデミー賞オリジナル作曲賞(ルイス・エンリケ・バカロフ)受賞
     英アカデミー賞外国語映画賞受賞
     日本アカデミー賞外国作品賞受賞
     キネマ旬報ベストテン第1位

     メーカー:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ホーム・エンタテインメント
     メディア:DVD

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