替えがきかない、佐藤浩市という元二世俳優。
![キネマ旬報 2009年 2/1号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51iJP1ciGtL._SX354_.jpg)
替えがきかない、佐藤浩市という元二世俳優。
introducing 「雪に願うこと」「The 有頂天ホテル」「誰も守ってくれない」
名優とは、多少髪型を変えたにしろ、同じ顔をしてまったく違うキャラクターを演じる。そしてそのキャラクターに圧倒的な存在感を与える。
ロバート・デ・ニーロがいい例だ。
彼が無名だった60年代、ブライアン・デ・パルマが監督した低予算映画から50本以上の出演映画を僕は観ている。顔が細い二十代の変態野郎を含め、体重を11キロも増やしアル・カポネを演じたときですら、ロバート・デ・ニーロにしか見えない。3Dメガネを使っても無駄だ。
そんな名優を父親に持つ二世俳優は、大抵初めのうち、交換可能な役者だ。
ところが最近の佐藤浩市は、役の大小にかかわらず、独特の異彩を放っている。
ハイホー、マンハッタン坂本です。
「雪に願うこと」では、北海道の馬橇(そり)レースであるばんえい競馬の調教師を演じた。
ある日、会社を倒産させた弟(伊勢谷友介)が東京から無一文になって帰ってくる。
兄は、厩舎の使用人と同じような生活をさせ、引退間近のウンリュウという馬の世話をさせる。
だがいつしか弟はその馬に入れ込むようになり、馬と共に元気になっていく。初めのうち、怒ると平気で殴った兄だが、そんな弟の姿を見て、心を許すようになる。
ウンリュウに勝負をかけたレースの日、弟の再起を願うかのように馬を見つめる顔が、優しくも精悍だった。
(注釈1)
「THE 有頂天ホテル」では、カッコつけしの汚職国会議員を演じた。
秘書をこき使いマスコミを避けてホテルを脱出しようとするが気が変り、自殺を試みるがまた気が変り、真相を暴露しようと記者会見を開くがまたまた気が変り、結局脱出する。
コールガール(篠原涼子)、ベルボーイ(香取慎吾)、ルーム・サービスをする昔の彼女(松たか子)、その時々に出会う相手で表情を変えるが、それが憎たらしくもあり、滑稽でもあった。
(注釈2)
「誰も守ってくれない」では、中学生の娘を持つ離婚寸前の刑事・勝浦を演じた。
娘のためにプレゼントを用意した勝浦は、休暇を取って仲直りの家族旅行をする予定だった。
だが不本意にも、小学生姉妹殺人事件の容疑者の妹で、娘と同じ年ごろの沙織(志田未来)を保護する役目を命じられる。マスコミや世間の目から守るためだ。
警察が用意したホテルはすぐにマスコミに見つかり、苦し紛れにかくまった自宅マンションも執拗な新聞記者に嗅ぎつけられ、遠く海辺のペンションまで流れ着く。このペンションは、3年前に自分の捜査ミスで幼い息子を殺された両親が経営している。
沙織は、兄が殺人犯であること、その妹だという理由で世間から糾弾されていること、そして兄の逮捕が原因で母親が自殺したこと、すべてが受け入れられず、必死で自分を守ろうとする勝浦に反発する。
「誰かを守るってことは、その人の痛みを感じるってことだ」
信頼する友人の罠にはまりペンションを抜け出した沙織を体を張って助けた勝浦は、やっと心を開いてくれた沙織に対し、そう言って抱きしめる。まるで自分の娘のように。
今から休暇だと宣言した勝浦は、別れ際にペンションの主人(柳葉敏郎)から妻が妊娠したことを知らされる。
そして沙織から、車に忘れた娘へのプレゼントを渡される。包みがシワだらけである。
苦しみを乗り越えたあとの笑顔は素晴らしい!
佐藤浩市のあのこぼれるような笑顔、本当に名演技だった。偉大なる父、三國連太郎に負けないくらいに。
(注釈3)
苦しみを乗り越えたあとの酒は、格別においしい。
注釈1、「雪に願うこと」(監督:根岸吉太郎)
日本映画 2005年製作 英題:What The Snow Brings
東京国際映画祭グランプリ、監督賞、
最優秀男優賞(佐藤浩市)、観客賞受賞。

メーカー:ジェネオン・エンタテインメント
メディア:DVD
注釈2、「THE 有頂天ホテル」(監督、脚本:三谷幸喜)
日本映画 2006年公開

メーカー:東宝
メディア:DVD
注釈3、「誰も守ってくれない」(監督、脚本:君塚良一)
日本映画 2009年公開 英題:Nobody To Watch Over Me
モントリオール国際映画祭最優秀脚本賞受賞。
日本アカデミー賞新人俳優賞(志田未来)受賞
主題歌:リベラ「あなたがいるから」

メーカー:ポニーキャニオン
メディア:DVD
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